記念小説

□願うこと。
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「出来ましたよ」
俺はシフォンケーキを片手に再登場した。
ふわふわしたケーキを目の前に、香はきらきらした目をしている。
「香はケーキ好き?」
「大好きなのっ」
「女って甘いものが好きって言うが、本当なんだな」
ディルカが横目でアギを見ながら、スプーンをカップの中で回した。
「ボクは女の子じゃないけどねぇ…?」
雰囲気が一変したアギを見てしまった香は硬直している。


「あははっ、香は感情がころころ変わって面白いねっ!」


香はまた顔を染めた。
率直で気持ちを伝える王子にどう反応したらいいのか分からないのは初対面の人ならよくあることだ。
きっと、そんなことを考えているに違いない。


「美味しいですね」
柚介が俺の作ったケーキを絶賛している。
何故かこの人に褒められると嬉しいのは何故だ…。
「スカイ君が作ったケーキは何を口にしても美味しいですよ」
ユリスは笑いながら柚介がケーキを食べている光景を眺めていた。
そうだ、ユリスは甘いものがダメなんだ。
砂糖の分量を減らせば良かった。


突然、王子が席を外して窓の外を指差した。
「見て見て、綺麗な夕陽!
ねえ、外に出てみようよ」
王子は窓の鍵を開け、外に駆けて行った。
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