記念小説

□願うこと。
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***


「…ということで、気がついたら雪の上にいたのですよ」
男:日高柚介(ひだかゆうすけ)が分かりやすい説明をしてくれた。
本当に異世界からのトリップらしい。
相変わらず王子は女:早坂香(はやさかこう)のとんぼ玉に興味津々だ。
「綺麗な柄だねっ、初めて見たよ」
「ありがとう」
香は頬を染めながら笑った。
柚介の方を香は見ると、ふふんと勝ち気な笑みを見せた。
柚介は苦笑している。
ここに来る前、ケンカでもしたのか…。


「お2人はどういった関係で?」
ユリスは躊躇無しに質問をぶつけた。
「学校の教師です。
彼女は私の生徒でして」
一瞬、香の表情が変わったがあえて触れないことにした。
「学校の教師ですか、素晴らしいですね」
「いえ、貴方がたの名前は?」
「申し遅れました。
私はユリス:ムーンドロップ。
隣にいるのはディルカ、私の弟です」
兄弟揃って跳ねたマロン色の髪と翡翠色の瞳。
「向かいがアギ:デュラマーニ君、ディルカの幼なじみであり親友です」
焦げ茶色の長髪天パに群青色の瞳。
「立っているのはスカイ君」
漆黒の黒髪に紅色の瞳。
「そして、あちらがこの世界の王子、スカーレット様です」
アホ毛の生えた紅髪にグレーの瞳。
王子だと知った瞬間に見せた異世界人の反応を見て、俺は溜息をついた。


予想外だったんだろうな、彼が王子だということが。
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