番外編

□白黒Noise
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 「紅薔薇は薔薇の中でも、
 希少価値の薔薇なんだよ。
 何故だか分かる?」
 インティゴは頭に無い薔薇
 の知識を適当に言ってみる。
 「他の薔薇と比べて、適温
 が違うから…とか?」
 「ううん、薔薇はすべて均
 一だよ」
 「じゃあ分からない、何で
 だ?」
 それはね、とウィルは人差
 し指を立たせた。


 「人間の血液が必要になる
 から、だよ」


 沈黙。
 先に口を開いたのはインテ
 ィゴだ。
 「人間を犠牲にするとは聞
 いたことはあったが…」
 「そう、血液を欲する為に
 ね。
 血液を薔薇に与えてもいい
 とか言う人間は物好き以外
 にはあまりいないし。
 だからかな、僕が紅薔薇に
 憧れるのは」
 インティゴの頭にクエスチ
 ョンが浮かぶ。
 「この世界の紅薔薇は、血
 液を欲する為にいろいろな
 ことを自力でやる植物なん
 だ。
 他の薔薇は違うけどね?」
 「その何処がいいって言う
 んだ」
 「薔薇ってすごく小さな植
 物でしょ。
 なのに、自分で努力して養
 分を得ている。
 薔薇だけじゃない、植物な
 ら皆そうさ。
 僕は幼い時から身体が弱い
 し、回りの人に助けられて
 ばかりだった。
 だから、自力で養分を得よ
 うとする紅薔薇はすごいな
 って。
 …まあ、紅に限らずだけど」
 インティゴは俯いた。
 「どうせ僕は弱いからって、
 政府の人達は僕を見ようと
 もしなかった。
 ただ偉いだけの息子だとも
 言われた。
 だから、正直辛いけど、僕
 のことを頼ってくれる長が
 好きだったりする。
 今は裏を見てしまったから、
 すごく憎いけど」
 「そうか…お前にもそうい
 うことがあるんだな」
 インティゴが呟く。
 しばらく沈黙が続いた。

 
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