番外編

□白黒Noise
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 「ただいまインティゴ」
 インティゴの部屋に、ウィ
 ルは立ち寄った。
 「おかえり…って、何だ、
 その大きい布は」
 「アギ君に描いて貰ったん
 だよ」
 布を開くと、薔薇の世界が
 広がった。
 金色の額縁に入っている。
 「そういえば、アギは絵が
 上手だったんだっけ?」
 「そうそう、世界一の将来
 有望な画家さんだよ」
 インティゴは「へぇ」と、
 生温い返事を返した。
 それでもウィルは嬉しそう
 だ。
 インティゴは絵を見て、ウ
 ィルが喜んでいる理由が分
 かった。
 「そうか、お前が好きな薔
 薇を描いて貰ったから…」
 「アギ君に描いて貰ったの
 も嬉しいけど、やっぱりこ
 の色鮮やかな薔薇が気に入
 ったんだっ♪」
 インティゴは何故か目眩が
 した。


 「何で紅薔薇が好きなんだ
 ウィル。
 白でもじゅうぶん綺麗じゃ
 ないか」
 「どうしてかな。
 昔から、何故か紅い薔薇に
 は目が無いんだよね」
 くすくすと小さく笑いなが
 ら、ウィルは自分の腕を眺
 めた。
 袖を捲れば見える、生々し
 い傷痕。
 「だけど、いざ紅い薔薇が
 自分のものになると思うと
 複雑で…」
 「紅い薔薇なんて、絵だけ
 でじゅうぶんだよ。
 紅薔薇はこの世界で「死を
 示す花」と言われているん
 だ。
 縁起悪いじゃないか」
 「そうだよね。
 …でも、どうしてそんなに
 紅薔薇を気持ち悪がるのか、
 僕には理解が出来ないよ。
 こんなに幻想的で綺麗なの
 に」
 インティゴは頭を抱えた。
 何故こいつは理解に乏しい
 んだ。
 「まあインティゴの言う通
 り、縁起悪いから当たり前
 だよね」
 妙に悲しそうな表情を、ウ
 ィルは見せた。

 
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