番外編

□親友と呼べる奴
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 毛布に包まりながら、王子
 はココアを飲む。
 「王子…こんな雨の日に外
 に出たりなんかしたら、風
 邪をひきますよ」
 「うん…でも、薔薇を育て
 たら、僕の大切な人も帰っ
 てきてくれる気がするんだ」
 遠い目をしながら、王子は
 微笑んだ。
 「スカイの大切な人、戻っ
 てきたんだよね。
 …僕も信じていれば、きっ
 と大切な人、帰ってくるよ
 ね?」
 いつもの無邪気さはなく、
 鬱そうな表情を浮かばせな
 がら、王子は毛布に包まり
 直す。
 こんなにも鬱な王子を見た
 のは初めてだ。
 明日、槍が降って来ないと
 いいのだが。
 「きっと、僕の大切な人も
 戻ってきてくれる。
 そう信じたい…!」
 王子は自分に言い聞かせる
 ような口調で、俺に訴える。
 俺は王子の手を静かに握っ
 た。
 「きっと、貴方の大切な人
 も帰ってきてくれますよ。
 王子が信じている限り」
 冷たくも温かな手。
 一粒の滴が俺の手に落ちた。
 温く柔らかな感覚。
 感情に浸っているかのよう
 な安心感。
 「スカイ、大好きだよ」
 優しい貴方の笑みが見れる
 のならば、俺は幸せです。


 「…ですが、何故いきなり
 大切な人と会いたいと?」
 「スカイを見ていたら会い
 たくなったの。
 本当はずっと帰ってきてい
 ないから、もう会えないか
 もとばかり思ってた。
 だけど、スカイみたいな奇
 跡があるのなら、僕も会っ
 てみたい、もう1度温もり
 を感じたいなって」
 頬を赤らめながら、嬉しそ
 うに王子は口を開いた。

 
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