Gate of Blackness

□Blackness-闇からの招待状-
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そもそも何故、政府に反する輩が生まれたのか謎は深まるばかりで情報も少ない。
だが、逆襲班の力が政府以上だということは確かだろう。

この“戦争”が終わるまでしばらく身を潜めていて欲しい。
そうティアラ様に言われ、俺は村のはずれにある洞窟に身を隠していた。
洞窟にいる間、銃弾や爆撃の音、そして聞いたことのない人々の声が俺の耳を刺激した。
あまりの衝撃に俺は耳を塞ぎうずくまって時が経つのをじっと待っていた。


久しくティアラ様が俺の前に姿を見せたのは戦争が終わって数ヶ月経った日のことだった。
最初に会った時とは比べ物にならないくらい彼女はやつれていた。
逆襲班のあまりの強さに、政府は白旗をあげたらしい。
戦争の悲惨さ、逆襲班の恐ろしさ、彼女は簡単な言葉で教えてくれた。
その言葉ひとつひとつが俺の胸に引っかかった。


誰にも分からない逆襲班の真実。
政府の調査によると逆襲班で命を落とした者はいないという。
一方政府の軍隊、そして駆り出された一般人、彼らのほとんどが命を落とした。


逆襲班の力は圧倒的だった。


“感情”を理解するのが難しい俺はティアラ様が酷く笑っているのをただ見ていることしかできなかった。
彼女にどう話せばいいか、自分が何を思っているのか、全部分からなかった。


“記憶をなくしている自分”には、“感情が分からない自分”には、なにも分からなかった。


そんな状況でもティアラ様は笑顔で、また俺に手を差し伸べてくれた。
彼女の強さに俺は背中を押された気がした。


執事って自由が無い職業かも知れないが、俺は全くそんなことは思っていない。
拾われたからそう思うのではなく、本当にとても満足している。


あの時ティアラ様が俺に手を差し伸べていなかったら、俺は今何処にいたのだろう。

 
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