Gate of Blackness
□Blackness-闇からの招待状-
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Prologue-平穏な世界-
雨音が部屋に鳴り響いている。
俺はひとり降り続く雨を眺めている。
家具ひとつないこの部屋で、じっと雨の音を聞いていた。
真っ暗で、静かで、どこか怖さを感じる雨。
何も見えない未来に期待を寄せたって、俺は雨のように降り堕ちていく。
この世界は俺を見捨てた。
だから俺も、この世界に従うように堕ちていくだけ。
周りの反応が怖いわけじゃない。
ただこの世界に従うだけ。
そう自分に言い聞かせた。
なのに、なぜ貴女は俺に手を差し述べたのですか。
だから俺は“感情”というやっかいなものを意識するようになったのですよ。
けれど、貴女のおかげで俺はこの地に恥じることなく立っていられる。
それだけは素直に感謝を告げよう。
でも闇から抜け出せたくらいで喜んでいても、俺は何も変われるはずがない。
この先見据えることなんてないと思っていた未来を、見据えて行かなくてはならない。
闇から抜けたことと引き換えに授かったひとつの命と共に。
新たな分厚い本の物語を作るために。