死神ゴッズ

□TURN5
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この場にいる全員は注目した。
何に?と聞くのは愚問だろう。
階段の上に立っている彼女は涼しい笑みを浮かべながらゆっくりと降りてくる。
その彼女の姿を凝視するしか出来なかった。
1人を除いては。


「綾乃。
貴女、クロコダイル君を過去に連れて行くと言ったわね。
どうやって過去に行く気?
…いえ、そもそも貴女は何者なの?」


静かに放たれるフィーネの言葉。
彼女の瞳はこの場にいる誰よりも綾乃と名乗った彼女を捕らえていた。
その瞳が物語っているフィーネの感情は『警戒』。
フィーネの言葉に皆も小さく頷く。


「ん、あぁ、それは…」


階段を降りきった綾乃が口を開いたときだった。


「あぁ―――!!!!
君は夢にでてきた女の子!!!!?」


ガレージ内に響いたアウロンの声。
彼は勢いよく右手で彼女を指し最大限出せる音量で叫んだ。
その声の大きさはすさまじく、隣にいたジャックが少しは黙れ!!!と怒鳴るほどだ。


「ちょっと待て、アウロン。
夢に出てきただと…
あの女がここに来ることを予知夢で見ていたのか?」


「違うよジャックさん。
俺は崩壊した街の中に彼女がいたという夢を見ただけで…」


あれ?
尋ねられた問いを答えたとき、アウロンの中にとある疑問が浮かんだ。
自分は『予言者』。
予知夢で未来を見通すことができる人間。
仮に自分が見たあの夢が予知夢なら、自分は彼女と崩壊した街の中で出会っているはずだ。
それなのに今、それが違う。


「(あれは予知夢じゃなかった…?)」


そのような言葉を心の中で繰り返すアウロン。
彼の様子にカリアは疑問を浮かべるばかり。


「アウロン、どうかしたか?」


「あ、いや…」


1人で考え込んでいた彼にカリアが話しかける。
話しかけられたアウロンは苦い笑みを浮かべるだけ。
そんな2人にフィーネの冷静な声が聞こえてくる。


「アウロンの予知夢の事はほうっておいて話題を戻すわよ。」


アウロン達に向けていた視線を綾乃に移したフィーネ。
彼女に瞳は本当に冷たいが、綾乃は笑みを絶やさないままガレージ内を見渡す。
そして口を開いた。


「名前は霜月綾乃。
信じられないと思うけど、貴方達から見れば未来の世界から来た人間よ。」


「はぁあ!!??」


「っ!??」


「何!?」


同時に響く皆の驚きの声。
驚きの声を上げていないのはカリアとフィーネだけだ。
それぞれ驚きの感情を表す皆を横目で見ながらも、フィーネはとある言葉に対し言葉を返す。


「今『未来の世界』と言ったわね。
つまり、貴方は未来の人間。
その未来の人間が何の用かしら?」


今、遊星が謎の男によってさらわれたばかり。
アキ達が持ってきてくれた記事のおかげで、あの男は過去にいることが分かった。
それと同時に現れた『未来の人間』。
どう考えても疑うしかなかった。


「さっき言ったでしょう?
力を貸して欲しいって。
私はカリア…
貴方に力を貸して欲しくてこのガレージに来たの。」


「俺にだと?」


強く頷く綾乃。
しかしフィーネと同じ警戒の眼差しを向けながら問う。


「You、綾乃とか言ったな。
どうして俺の力が必要なんだ?」


「それ以前にお前、本当になにもんなんだ?
さっき俺達の目の前に時代を超える力を持った男が現れた。
……まさか、そいつの仲間じゃねぇだろうな。」


クロウはフィーネと同じ事を考えていたのか、とても強い瞳で彼女を見る。
見られている綾乃は涼しい表情を崩さず、ただフッ…と微笑むだけ。


「クロウの答えは半分イエスで半分ノーよ。」


「っ、テメェ…
何で俺の名前までっ…!??」


「君だけじゃないよ。
シグナーである遊星、ジャック、クロウ、アキ、龍可の事は知ってるわ。
もちろん、ブルーノと龍亞、イスズの事も。
バイアーメであるカリア、ユルグだったフィーネ、予言者のアウロン。」


友好的な笑みを浮かべる綾乃。
しかし彼女の言葉は警戒心を増幅させるのに十分すぎる。
一方的に知られている。
もデュエリストではなく、シグナーとして。
カリアは目を細め、そして強く彼女を睨み付ける。


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