死神ゴッズ
□TURN3
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沢山の人が本を読む。
本を読んでいる人は他者に侵されない自分だけの領域を作り、ゆっくりと自分だけの時間を過ごしている。
「なぁ、龍可、これ使えないか?」
「どれ?」
本を片手に持つ龍亞。
龍可は兄が手にした本を受け取り、ページを数枚ほどめくる。
そして少し怪訝そうな表情をして龍亞に返した。
「これは違うんじゃない?」
「そっかぁ〜…」
デュエルモンスターズの歴史。
それを調べるために2人は図書館に来ている。
龍亞と龍可のために、お姉さん代わりの2人も資料探しを手伝っているのだ。
「それにしても、どうしてフィーネは来れなかったのかしら。」
ふとした疑問。
アキは隣にいるイスズに尋ねる。
イスズは自分と一緒で本棚から本を取り出し、参考になるか目次を見ていた。
目次から目をそらし、アキに目を合わせる。
イスズはただ首を傾げるだけ。
「気になりますか?」
「えぇ。」
2人しかいない空間に響いた上品な女性の声。
アキとイスズは声がした方向に目をやる。
そこには図書館を物珍しそうに見渡しているイスズの相棒。
エースカードである【レジェンド・マジッククィーン〜カーティン〜】と【セイント・クリスタル・ドラゴン】のセルヒオの姿が。
カーティンは他の人たちの読書を覗き見しながら楽しそうに館内をめぐっている。
セルヒオは精霊ということを生かし、堂々と床に寝転んでいる。
「…論文?」
「それはないわ。
フィーネ、最近は高校生活を楽しみたいからそういう頼みは一切断っているの。」
フィーネは自分達2人と同い年でも、頭のつくりが違う。
そのせいで多くの企業や学会のお偉いさんから色々なことを頼まれている。
だがアキの言うとおり、最近はそういう事を一切していない。
だからおかしいのだ。
自分たちと一緒に図書館に来なかったことが。
「…なら、何で…?」
「思い当たりませんねぇ…」
本を持ったまま首をかしげるイスズ。
カーティンは頬に手を当て、上品に首をかしげた。
アキも思い当たらないのか不可解な思いをする。
瞬間、セルヒオとカーティンの表情が険しくなる。
そして2人はある一点をじっと見つめた。
「きゅいっ。」
「…どうしたの?」
先ほどまで床に寝転んでいたセルヒオ。
彼はイスズのロングスカートを優しく咥える。
そして誘導するかのように引っ張り始めた。
「イスズ、アキさん。
あの資料を取ってくれませんか?」
セルヒオが引っ張るのと同時に聞こえた声。
その声はどこか真剣さが含まれていた。
彼女の声にイスズとアキは応える。
「…?」
「構わないけど。」
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