死神部屋

□TURN1
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赤い光を放つ月。
その月は全ての生き物を見下すように笑っている。
月に見下されている世界には絶望しか溢れていない。
絶望は静寂を保ち、もし命の息吹が聞こえたらすぐにそれを殺すであろう。


「…ここはっ!!
もう、ここにはいないのね……」


ふと響いた声。
その声を響かしたのは1人の少女。
彼女は瓦礫の山を蝶のように軽やかに舞う。
絶望の世界に存在する彼女はどこか可憐さを漂わせていて。


「どうするんだ?
パラドックスは遊城 十代の時代に飛んだぜ。」


「決まってるって!!
もち、十代の時代に行くよ!!」


隣から聞こえた声。
彼女は自分に声をかけてきた男性に強い眼差しを向ける。
獣のドクロを被った男性は彼女の瞳だけをみた。
その強い意志がある瞳を。
その瞳を見て、少しだけ機嫌が悪くなった彼は言う。


「しゃぁねぇな、レーザを出せ。」


「分かっているわよ、【死門番レーザ】召喚!!」


少女は左手に嵌めているデュエルディスクを起動させる。
絶望の世界にその光は救いの一筋の光に見えた。
そしてカードを攻撃表示でセットする。
すると少女の目の前に1人の男性が現れた。
音も無く……


「俺に何か用か?
マスター?」


「マスターじゃないわよ、綾乃よ。
いい加減名前で呼んでって!!」


現れたレーザは彼女に対し不敵な笑みを浮かべる。
その笑みにトキメキを覚えた少女、綾乃はその考えをすぐに追い払った。
クロス・ボーンは2人の対話にヒャヒャヒャ…という奇声を出しながら笑っていた。
そんな彼に綾乃は「黙って!!」と怒鳴る。
だが、クロス・ボーンは黙らない。


「まぁ、良いよ…
レーザ、門を開けて。」


「面倒だな…」


「よぁし、レーザ君。
この可愛いウサギのぬいぐるみをあげよう。」


「べ、べ、べ、そのウサギなんてちっとも欲しいなんて思ってないからな!!!
ただ俺はもらえるものは全部貰う主義なんだよ!!!!」


「…単純な奴。」


おっさん顔のくせに可愛いものに目がないレーザ。
クロス・ボーンは哀れみの目で自分の旧友を見つめる。
そしてウサギのぬいぐるみを受け取ったレーザは地面に手を当てる。
その地面さえ、生きている鼓動を感じられない。
レーザは目を細め、呪文を言い始める。
クロス・ボーンと綾乃は黙ってその光景を見ていた。


ゴォオオオオ!!!!


瞬間、3人の目の前に巨大な門が現れた。
門は灰色で、まるで地獄絵を現しているかのような模様が描かれている。
その門を見上げる綾乃は緊張のあまりか唾を飲み込んだ。


「これを通れば遊城 十代の時代だ。」


「ほ―――。
流石はレーザ。
これだけは一人前だな。
よし、褒美に俺の一太刀を浴びせてやろう。」


「アホかっ!!!
お前の一太刀は一太刀じゃねぇんだよ!!!!」


すかさずツッコミを入れるレーザ。
すでに鎌を構えているクロス・ボーンはヒャヒャヒャと笑いながら挑発する。


「お?
ケンカなら買うぜ。
ヒャヒャヒャヒャ。」


「ちょっと、どうでも良いから黙ってよ!!!」


クロス・ボーンは怨念が篭った鎌も持ちかまえ、レーザも防御のため戦闘体制にはいる。
が、その光景に綾乃はすぐに大声をだした。
これが始まったら、もともと壊れている世界がさらに壊れてしまう。
ため息をついた綾乃は扉を見上げた。


「待ってて……
パラドックスっ!!」


彼女は門の扉に触れ、そして扉を押す。


「(貴方を、死なせたりしない!!!)」









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