死神ゴッズ
□TURN5
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「綾乃。
さっきクロウが言ったとおり、俺達の目の前に未来から来たかもしれない男が現れ、俺の恋人をさらって行った。」
とても力強く、けど慎重な声色。
先ほど彼女は半分イエスで半分ノーと言った。
それが何を意味するのか今の段階では分からない。
だから聞き出すしかない。
己の中の焦る思いを抑えながらも尋ねる。
しかし、カリアの言葉を聞いた綾乃の反応は意外で。
「マジ…!??」
不意に漏れた彼女の言葉。
その言葉遣いに皆は一瞬だけ違和感を覚えた。
先ほどまではクールな印象を与えていたがその雰囲気が一瞬だけ崩れた。
だがそんな事よりも。
「…知らないのか?」
「えぇ…
私が知っているのはパラドックスが【スターダスト・ドラゴン】を奪い、過去に逃げたって事で…
人を攫うなんて。
ってか、恋人って誰?」
「遊星だ。」
「えぇえ!!?
マジ!?
あぁ、だから遊星の姿がないのね…」
すぐに返ってきた答えに綾乃は今まで漂わせていた雰囲気では決して口に出さないような言葉を放つ。
それほどあの男が人を浚うなどと考えられなかったのだろうか。
彼女のそんな態度にカリア達はさらに疑問を持つ。
するとアウロンが綾乃に尋ねた。
「ねぇ。
さっき君はパラドックスって言ったけど…
それが彼の名前なの?」
「えぇ。」
彼からの質問に綾乃はすぐに返した。
そして彼女は少し困ったような表情をしながら考え事をするような仕草をする。
先ほどまで漂わせていたクールな雰囲気を漂わせながらも本当に焦っているような雰囲気もあった。
「…あの、綾乃…さん?」
「ん。
綾乃で良いよ。」
カリアの後ろにいたイスズ。
彼女は緊張した声で綾乃の名前を呼び、そして今、自分が最も知りたい事を綾乃に尋ねた。
綾乃はパラドックスの仲間かどうかは分からない。
だが話を聞く限りパラドックスの居場所を知っているような口ぶりだ。
「…綾乃ちゃんは…
……その…
……パラドックスっていう人は…
……今、どこにいるのか知ってるの…?」
「過去の時代よ。」
「過去の時代は分かってる。
けど、どの過去の時代か俺達は知りてぇんだ。
そうだろイスズ。」
「(コクリ)」
迷うことなく一瞬に返ってきた答え。
綾乃の言葉にクロウは難しい表情で言葉を述べる。
パラドックスは過去に飛ぶ力を持っている。
いつまでも同じ時代にいるとは思えない。
だがここでもう1つ気になる質問が出てきた。
その質問についてこの場の中で誰よりも気持ちが先走りそうなカリアが厳しい口調で尋ねる。
「綾乃。
Youは今、パラドックスが過去の時代にいると言ったな。
一体どうやってパラドックスの所に行くつもりだ?」
とても厳しい口調に綾乃は苦い笑みを浮かべた。
まぁ仕方のないこと。
大切な恋人を浚われたのだ。
ピリピリするなというほうが無理である。
それを理解できているのか綾乃は笑みを浮かべて言った。
私は敵じゃないよ、という笑みを浮かべて。
「簡単な話よ。
シグナーの神、赤き竜。
そして私の仲間の力を使えばいいの。」
「どういう事だ?」
「赤き竜の力に…
お前の仲間の力、だと?」
ジャック、クロウから返ってくる疑問の声。
赤き竜と彼女の仲間の力。
彼女自身の力ではないのか、と思いながらも2人は顔を見合わせた。
「へぇ、紹介して欲しいわね。
貴女の言う仲間のことを。」
「えぇ、いいわよ。
それにしても本当にフィーネってクールね。
クールすぎて怖いくらい。」
「一応褒め言葉として受け取っておくわ。」
互いに一歩も譲らない腹の探りあい。
その光景を見ながらカリア達は口を閉ざす。
シンとした雰囲気に綾乃は再び苦い笑みを浮かべる。
そして左手に嵌めている灰色のデュエルディスクを起動させた。
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