光を詠う物語
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朝目が覚めて、真っ先に思い浮かぶ………
ここはどこでしょう。
++突然の始まり
私の名前はメグミ、ごく普通の高校1年生………昨日までは。
ふと目が覚めたら森の中にいた。
やけに寒いなと思ったらこのせいか、なんて思ってる場合じゃない。
ここはどこだ。
とりあえず記憶を廻らせてみる。
朝、いつも通りに友達と待ち合わせて学校に行き、授業を受けて、
英語の授業が退屈だなーって、ぼんやり空を見上げてて、
お昼休みの時に、こっそり持っていってたお菓子が先生にバレて、半分ほど持ってかれたりして(あとでお返しもらわないと)
そして学校が終わって、家に…………。
「……あれ?」
家に、帰ったっけ?
そこらへんで記憶が、途切れている。
なんでだ、何があったの……?
考えてみても何もわからない。
わからないが、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。
仕方ないかと一つため息を吐き、森の中を歩き出すことにした。
しかし、どこに行けばいいのだろう?
歩き出して数歩、その足はすぐに止まった。
360度ぐるりと見渡しても木、木、木………。
こんな大きな森など、日本で見たことが無い。
ひょっとしたら、日本じゃないのか?
よくあるトリップとかいう奴……
なんて思い始めたら、前方に人影が見えた。
自分以外にも人がいることにほっと安心し、そちらの方向に駆け寄っていった。
そして、その人達を見て私はまた驚くのだった。
結論からいうと、私はマイソロ2の世界にトリップしていました。
うん、びっくりだね。
顔にはあんまり出ていないけど。
「それで、あなたは何故あんな危険な森の中にいたのですか?」
「えーと……」
そして現在、船長でギルドリーダーのチャット船長に尋問(何か違う)されてる真っ最中である。
何故、と言われてもわからないものはわからない。
だからそのまま正直に答えてみた。
「その…わからないんです…」
「はい?」
「気がついたら…あそこにいたんです」
「……まさか…」
すると船長さんは小さく呟き、何かを考える仕草を見せた。
うん、嘘はいってない。
そして、また別の質問をしてきた。
「では、ご自分の故郷はわかりますか?」
「…一応……」
「一応って、まさかわからないんですか?」
「いえ、故郷はわかります……けど…」
歯切れの悪い回答に、船長さんは眉を寄せる。
故郷はもちろんわかる。
けれど、きっとこの世界には存在していない。
だからはっきりとは答えられない。
「…とりあえず、記憶喪失というわけではないようですね」
「…?はい…」
何故記憶喪失……?と思ったが、わけもわからず森にいたのなら真っ先にそれを疑うか。
わー…下手したら私、不審者になるところだった……。
「安心してください。この船なら、あなたの故郷までひとっとびで行けますよ。どこにあるんですか?」
どうやら船長さんは、歯切れが悪かった理由を、かなり遠い場所にあると解釈したらしい。
遠い場所といえば遠いけれど……。
「あの……“日本”という国を、聞いたことありますか」
「ニホン…?うーん……聞いたことありませんね。カノンノさんは?」
「うーん……私も知らないや」
森で出会ってここまで連れてきてくれた少女……カノンノちゃんも、首を横に振る。
あぁ、やっぱり存在しないのかな。
もしあったとしても、そこが私の知ってる“日本”とは限らない。
私はこれからどうすればいいんだろう。
急に強い不安に襲われ、涙があふれてしまいそうだった。
「ねぇチャット、この子の故郷を探してあげようよ!」
カノンノちゃんがそう言った。
それはとてもありがたい話だが、初対面の私にそこまでしてくれるなんて、正直申し訳ない。
「そうですね……。何か事情があるようですし…」
「あ、あの……でも、いいのですか…?」
「もちろんだよ!自由の灯火、アドリビトムは困った人達の味方だもの!」
「それに、このバンエルティア号に行けない場所などありませんから」
二人の言葉に胸がじんとなた。
そのあたたかい気遣いが、すごく嬉しい。
「ただし、この船に乗る以上、働かざるもの食うべからずです。あなたもボクの子分として、このギルド、アドリビトムのメンバーとして迎えましょう」
「……ありがとう、ございます」
二人に心から感謝し、ペコリと頭を下げた。
こうして私は、この船で生活していくことになった。
あ、でも私は戦えるのかな……。
そうふと思ってしまったことは内緒だ。
(突然の始まり)
(異世界で私は頑張って生きていきます)
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