光を詠う物語

□01
1ページ/1ページ


 朝目が覚めて、真っ先に思い浮かぶ………



 ここはどこでしょう。





++突然の始まり





 私の名前はメグミ、ごく普通の高校1年生………昨日までは。
 ふと目が覚めたら森の中にいた。
 やけに寒いなと思ったらこのせいか、なんて思ってる場合じゃない。

 ここはどこだ。

 とりあえず記憶を廻らせてみる。


 朝、いつも通りに友達と待ち合わせて学校に行き、授業を受けて、

 英語の授業が退屈だなーって、ぼんやり空を見上げてて、

 お昼休みの時に、こっそり持っていってたお菓子が先生にバレて、半分ほど持ってかれたりして(あとでお返しもらわないと)

 そして学校が終わって、家に…………。



「……あれ?」


 家に、帰ったっけ?

 そこらへんで記憶が、途切れている。


 なんでだ、何があったの……?


 考えてみても何もわからない。
 わからないが、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。

 仕方ないかと一つため息を吐き、森の中を歩き出すことにした。




 しかし、どこに行けばいいのだろう?


 歩き出して数歩、その足はすぐに止まった。
 360度ぐるりと見渡しても木、木、木………。
 こんな大きな森など、日本で見たことが無い。


 ひょっとしたら、日本じゃないのか?
 よくあるトリップとかいう奴……


 なんて思い始めたら、前方に人影が見えた。
 自分以外にも人がいることにほっと安心し、そちらの方向に駆け寄っていった。


 そして、その人達を見て私はまた驚くのだった。








 結論からいうと、私はマイソロ2の世界にトリップしていました。

 うん、びっくりだね。
 顔にはあんまり出ていないけど。


「それで、あなたは何故あんな危険な森の中にいたのですか?」
「えーと……」


 そして現在、船長でギルドリーダーのチャット船長に尋問(何か違う)されてる真っ最中である。

 何故、と言われてもわからないものはわからない。
 だからそのまま正直に答えてみた。


「その…わからないんです…」
「はい?」
「気がついたら…あそこにいたんです」
「……まさか…」


 すると船長さんは小さく呟き、何かを考える仕草を見せた。

 うん、嘘はいってない。

 そして、また別の質問をしてきた。


「では、ご自分の故郷はわかりますか?」
「…一応……」
「一応って、まさかわからないんですか?」
「いえ、故郷はわかります……けど…」


 歯切れの悪い回答に、船長さんは眉を寄せる。

 故郷はもちろんわかる。
 けれど、きっとこの世界には存在していない。
 だからはっきりとは答えられない。


「…とりあえず、記憶喪失というわけではないようですね」
「…?はい…」


 何故記憶喪失……?と思ったが、わけもわからず森にいたのなら真っ先にそれを疑うか。
 わー…下手したら私、不審者になるところだった……。


「安心してください。この船なら、あなたの故郷までひとっとびで行けますよ。どこにあるんですか?」


 どうやら船長さんは、歯切れが悪かった理由を、かなり遠い場所にあると解釈したらしい。
 遠い場所といえば遠いけれど……。


「あの……“日本”という国を、聞いたことありますか」
「ニホン…?うーん……聞いたことありませんね。カノンノさんは?」
「うーん……私も知らないや」


 森で出会ってここまで連れてきてくれた少女……カノンノちゃんも、首を横に振る。

 あぁ、やっぱり存在しないのかな。
 もしあったとしても、そこが私の知ってる“日本”とは限らない。


 私はこれからどうすればいいんだろう。


 急に強い不安に襲われ、涙があふれてしまいそうだった。


「ねぇチャット、この子の故郷を探してあげようよ!」


 カノンノちゃんがそう言った。

 それはとてもありがたい話だが、初対面の私にそこまでしてくれるなんて、正直申し訳ない。


「そうですね……。何か事情があるようですし…」
「あ、あの……でも、いいのですか…?」
「もちろんだよ!自由の灯火、アドリビトムは困った人達の味方だもの!」
「それに、このバンエルティア号に行けない場所などありませんから」
 

 二人の言葉に胸がじんとなた。
 そのあたたかい気遣いが、すごく嬉しい。


「ただし、この船に乗る以上、働かざるもの食うべからずです。あなたもボクの子分として、このギルド、アドリビトムのメンバーとして迎えましょう」
「……ありがとう、ございます」


 二人に心から感謝し、ペコリと頭を下げた。


 こうして私は、この船で生活していくことになった。




 あ、でも私は戦えるのかな……。

 そうふと思ってしまったことは内緒だ。





(突然の始まり)
 (異世界で私は頑張って生きていきます)





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ