月の祈り人

□第7話
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「で、結局目的地はヴェスタテルカでええんやな?」

「はい」

 街の出口に向かいながら問い掛けたシキに、カスティアは笑顔で頷いた。
 自然あふれる町の爽やかな朝の風景を堪能して、すこぶる上機嫌だ。鼻歌混じりに歩いている。
 自分に向けられたカスティアの他意のない笑顔に、シキはちょっぴり感動していた。
 男であることは分かっているが、こんな美人に出会うことはそうそうないので堪能しておこう、などと考えている内に街を出ていた。
 昨日と同じ道を歩き、昨日と同じ場所で昼食を取った。ただ一つ違うのは、あの盗賊たちは出てこないということ。

「そういえば、昨日の盗賊は捕まったんですよね」

 食事を終え、歩き始めてからリラが思い出したように言った。
 シキが頷く。

「せやな。フォルティエに常駐してる騎士団に報せたから、今は牢屋の中やろなあ」

「じゃあ今日は安心ですね!」

「油断は禁物です。もっと恐ろしい魔物が出るかもしれませんよ」

 喜ぶリラの額を小突いて窘める。はーい、と無邪気に笑うリラを見て、カスティアは何だか年の離れた弟ができた気分になった。

「ヴェスタテルカまではどれくらいかかるんですか?」

「三日くらいですね」

「じゃあ野宿かあ」

「途中に村がありますから、野宿ばかりじゃありませんよ」

 そんな会話を交わしながら三人は歩いていく。
 途中、珍しい薬草がありそうだと道を外れそうになるシキを引き戻したりしたが、概ね順調な旅だった。

「そういえば、シキさんって何で旅をしてるんですか?」

「んー? せやなぁ、研究のためとでも言えばええんかな」

「研究?」

 何の?とリラは首を傾げる。

「わい、薬師やし。薬草とか薬に関することに決まっとるやん」

「あ、そうでした」

「おいおい、忘れんといてやー」

 ポンと手を打ったリラに、シキはがっくりとうなだれた。

「訛りから察するに、東方の群島諸国出身ですか?」

「お、さすがカスティア。よう知っとるなあ」

 顔をあげたシキが、ニコニコと笑って自身のことを語り出した。

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