月の祈り人
□第5話
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明くる日、三人は港町に向かう街道を歩いていた。
一人ペラペラと喋りまくるシキを、カスティアは気持ちいいほどに無視をして、リラに話しかけていた。
二人の間を歩くリラは、ひきつった笑みを浮かべている。
こっそりとため息をついた。
──僕、選択間違えたかな……。
ほんのちょっぴり、そんな考えが頭をよぎる。
でも、一人では何かと不安だし、二人とも悪い人ではない。……多少、変わってはいるが。
「なあ、そろそろ昼飯にせえへんか〜?」
ぐう、と鳴るお腹を押さえてシキが言った。
キョロキョロと辺りを見回したカスティアが頷く。
「そうですね。ちょうどいい木陰もありますし、ここでお昼にしましょうか」
「よっしゃー!」
我先にと駆け出したシキが、途中でべしゃっと転び、駆け寄ったリラが引っ張り起こしている。
呆れたようなため息をつきながら、カスティアは二人を追って歩き出した。
カスティアが木陰に着いた時には、すでにシキが携帯食料を頬張っていた。
「腹減ってる時は何でもうまいもんやなあ」
「そうですか。それは何よりですね」
気のない返事をしながら、カスティアはテキパキとお茶の準備を始める。
どこからともなく取り出された一人分のティーカップとティーポットに、シキとリラが目をみはった。
「ど、どこにそんなものが……」
にっこりとカスティアが微笑む。
「乙女の秘密です」
「自分、乙女やないやん……」
ヒクリと口元をひきつらせたシキが力無くツッコむも、当の本人は涼しい顔だ。
「カスティアさんって謎だらけですね」
よくよく考えれば年齢も分からない。二十歳くらいにも見えるが、落ち着いた雰囲気は随分と年上にも感じられる。
思い切って聞いてみようとリラが顔を上げた時、カスティアとシキを取り巻く空気が変わった。
カスティアがカチャリとティーカップを置いた。
「魔物やないな」
「ええ。盗賊でしょう」
盗賊、という単語にリラの顔が青ざめる。
だが、カスティアたちは表情こそ真剣だが、落ち着いたものだ。
そして──ザッと草を踏む音がして、十数人の男たちが素早く三人を取り囲んだ。
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