月の祈り人

□第1話
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 ああ、今日は厄日だ。

 パチパチとはぜる焚き火の向こう側に座る男を見て、カスティアはため息をついた。
 そんなカスティアの心境など露知らず、男はへらっと締まりのない顔を向ける。

「ため息つくと幸せが逃げるで〜」

「……そんなもの、あなたに出会った時点でとっくに逃げてます」

「おー、なるほど。わいに出会うた幸せが大きゅうて、その他の幸せみーんな逃げてったとそういうわけか」

「違います」

 きっぱりと否定するも、男はからからと笑い飛ばした。

「照れるな照れるな」

「照れてません! ……まったくどれだけプラス思考なんですか」

 馬鹿馬鹿しくなって、カスティアは男から顔をそむけた。
 長い金の髪がさらりと揺れる。
 長い睫に縁取られたエメラルドの瞳は憂いを秘めている。
 焚き火の炎が白い肌を赤く照らすその様は、一枚の絵画のようだった。
 だが、そんな幻想的な雰囲気の中、カスティアの心を占めているのは後悔という二文字。
 もう一度ため息がこぼれる。

 ──ああ、何てひどい拾い物をしてしまったのだろう。

 心の中で呟きながら、昼間の出来事を脳裏に思い描いた。


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