月の祈り人

□第11話
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「な、何や!?」

 すぐ近くの窓ガラスが吹き飛んで、シキたちは慌てて立ち上がった。

「……グリード……やりすぎ」

「そうかあ? 邪魔だったんだからしょうがねえじゃん」

 ガラスの割れた窓から現れた二つの人影。顔を見なくても今の会話で正体は知れた。

「あなたたちは……」

 身構えるカスティアの横で、首を傾げていたシキがポンと手を打つ。

「確か……テロとグレード!」

 一瞬にして、その場の空気が凍った。
 たった一人……シキだけが、闘志をみなぎらせてグリードたち二人に指を突きつけていた。

「あ、あの〜……えっと……」

 突っ込むべきか流すべきかでうろたえるリラの横では、カスティアが額を押さえていた。もうため息すら出ない。
 テオとグリードすら言葉を失い、シキを見つめていた。
 そんな微妙な空気を打ち破ったのは、聞き覚えのある声だった。

「変人の言うことなんて無視しなさいよ」

 少女の声は外から響いた。

「リディ……ア」

 リラがポツリと呟くと、それに応えるように壁から細い腕が生えた。徐々に全身が現れる。ぞっとする光景に、その場の全員が顔をしかめた。
 風に金の髪が揺れる。気の強そうな銀の瞳が、カスティアたち三人を捉えた。
 その姿にカスティアが息を呑む。

「……なるほど。確かに」

「な? 似てるやろ?」

 なぜか得意げなシキは放っておいて、カスティアはまじまじとリディアを見つめる。その視線を鬱陶しそうに受け止めて、リディアは小さく鼻を鳴らした。
 それから、すぐにリラへと視線を移す。冷たい銀の輝きにリラは唇を噛み締めた。

「リディア……」

「気安く呼ばないで」

 言いたいことがあるのに、まるで見えない刃を突きつけられているかのようで、リラは動けなかった。その様子に苛立ったリディアが、手のひらをリラに向ける。淡く光りかけた瞬間、横から伸びた手がリディアの腕を掴んだ。


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