月の祈り人
□第11話
1ページ/3ページ
「な、何や!?」
すぐ近くの窓ガラスが吹き飛んで、シキたちは慌てて立ち上がった。
「……グリード……やりすぎ」
「そうかあ? 邪魔だったんだからしょうがねえじゃん」
ガラスの割れた窓から現れた二つの人影。顔を見なくても今の会話で正体は知れた。
「あなたたちは……」
身構えるカスティアの横で、首を傾げていたシキがポンと手を打つ。
「確か……テロとグレード!」
一瞬にして、その場の空気が凍った。
たった一人……シキだけが、闘志をみなぎらせてグリードたち二人に指を突きつけていた。
「あ、あの〜……えっと……」
突っ込むべきか流すべきかでうろたえるリラの横では、カスティアが額を押さえていた。もうため息すら出ない。
テオとグリードすら言葉を失い、シキを見つめていた。
そんな微妙な空気を打ち破ったのは、聞き覚えのある声だった。
「変人の言うことなんて無視しなさいよ」
少女の声は外から響いた。
「リディ……ア」
リラがポツリと呟くと、それに応えるように壁から細い腕が生えた。徐々に全身が現れる。ぞっとする光景に、その場の全員が顔をしかめた。
風に金の髪が揺れる。気の強そうな銀の瞳が、カスティアたち三人を捉えた。
その姿にカスティアが息を呑む。
「……なるほど。確かに」
「な? 似てるやろ?」
なぜか得意げなシキは放っておいて、カスティアはまじまじとリディアを見つめる。その視線を鬱陶しそうに受け止めて、リディアは小さく鼻を鳴らした。
それから、すぐにリラへと視線を移す。冷たい銀の輝きにリラは唇を噛み締めた。
「リディア……」
「気安く呼ばないで」
言いたいことがあるのに、まるで見えない刃を突きつけられているかのようで、リラは動けなかった。その様子に苛立ったリディアが、手のひらをリラに向ける。淡く光りかけた瞬間、横から伸びた手がリディアの腕を掴んだ。
.