月の祈り人

□第4話
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 花と緑の街フォルティエ。
 自然溢れるこの街は、リーガル地方では港町に次ぐ大きな街である。
 貴族たちの別荘が立ち並ぶ通りを遠くに見ながら、カスティアたちは小川沿いの道を歩いていた。

「ええとこやなあ。空気がうまい」

 うーんとシキは伸びをする。
 道の両端に咲き誇る花々を見つめながら、カスティアが同意した。

「そうですねぇ。あなたと同意見ということは非常に残念ですが、認めざるをえませんね」

 だが、しっかりと嫌味を混ぜることは忘れない。
 豊かな自然を楽しむ二人とは対照的に、間を歩くリラの表情は暗い。
 暖かな日差しも、彼の周囲だけ見えない何かに遮られているかのようだ。

「わいらって、周りからはどないな風に見えとるんやろな」

 ふと、シキが呟いた。

「たとえば親子とか」

「せいぜい美人の兄弟とストーカーでしょう」

 シキの言葉に被せるように言い放ち、ねえ?とリラの顔を覗き込んだ。

「え? あ、はい」

 ハッと顔をあげたリラは反射的に頷いた。
 カスティアはリラの頭に手を置く。優しく金の髪をなでた。

「お医者さまの言葉が気になりますか?」

 リラは押し黙った。
 沈黙は肯定と取っていいだろう。
 先刻の医者の言葉が脳裏に蘇った。

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