月の祈り人
□第4話
1ページ/3ページ
花と緑の街フォルティエ。
自然溢れるこの街は、リーガル地方では港町に次ぐ大きな街である。
貴族たちの別荘が立ち並ぶ通りを遠くに見ながら、カスティアたちは小川沿いの道を歩いていた。
「ええとこやなあ。空気がうまい」
うーんとシキは伸びをする。
道の両端に咲き誇る花々を見つめながら、カスティアが同意した。
「そうですねぇ。あなたと同意見ということは非常に残念ですが、認めざるをえませんね」
だが、しっかりと嫌味を混ぜることは忘れない。
豊かな自然を楽しむ二人とは対照的に、間を歩くリラの表情は暗い。
暖かな日差しも、彼の周囲だけ見えない何かに遮られているかのようだ。
「わいらって、周りからはどないな風に見えとるんやろな」
ふと、シキが呟いた。
「たとえば親子とか」
「せいぜい美人の兄弟とストーカーでしょう」
シキの言葉に被せるように言い放ち、ねえ?とリラの顔を覗き込んだ。
「え? あ、はい」
ハッと顔をあげたリラは反射的に頷いた。
カスティアはリラの頭に手を置く。優しく金の髪をなでた。
「お医者さまの言葉が気になりますか?」
リラは押し黙った。
沈黙は肯定と取っていいだろう。
先刻の医者の言葉が脳裏に蘇った。
.