過去拍手

□過去拍手U
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「XANXUS…」


俺の目の前で微笑む姫。

ただ違うのは青白くて今にも死んでしまいそうというだけ。


「何だ」


それに対して俺は、ぶっきらぼうにしか言えなかった。

こんなかにも自分を呪いたくなったのは久しぶりだ。


「約束、覚えてる?」

「あぁ…」


どこか、遠く見ているような目で俺を見ながら尋ねる。

もちろん姫と交わした約束は覚えている。


「“私が死ぬ時はXANXASが。XANXASが死ぬ時は私が。その手で死なせる”」


凛とすんだ声が部屋に響く。


「………」


黙っている俺の頬に手を伸ばし、だから…と言う。


「あなたの手で私を殺して」


その一言が俺の体に、ゆっくりと染み込んでいった。


「…もう、いいのか」

「えぇ」


綺麗な微笑みを絶やさない姫に聞けば肯定の返事がくる。


「そうか…」

「XANXAS…愛してるわ」


そっと…そっと触れるだけの口付けをする。

段々と離れていく姫の顔……。

それを見届けた後、こいつの首に手をかける。


「楽にしてやる」


せめてもの情けだ…。

そう呟きながら一気に力を込めれば、直ぐに体から力が抜け………



綺麗な微笑みのまま逝ってしまった。



本当は楽になりたいのは自分の方だと自覚していた。

あいつが苦しむ姿を見たくなかったから。


「………カスが」


手を組ませ姫の寝顔を見る。


「…………………」


そこには普通に寝ているだけなんじゃないかと思わせるような姿の姫がいた。

……実際は、もう二度と目覚めることはない。

見終わると、その家の外に出た。


「………じゃあな、カス」


手に力を込めて出て来た光球の炎で、その家を跡形も無く消した。

灰すら残さずに…。




<やっぱりお前はカスだ。俺様を殺すことが出来たのは姫―お前だけだったんだ>

<最期は愛おしい者の手によっていなくなりたいのよ>








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