!恋人ごっこ

□直感の実用性
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まだ肌寒さが残る温かい日。

この前まであんなに防寒を試みてた
擦れ違う人も、すっかり薄着になって
儚い桃色の花の道を歩く。

その顔も何処と無くその花の色に
染まっている気がした。


『…』


東京

なんて遠いトコロに居るんだろう。

埼玉に行くなんて
まだ受け入れられなかったおれは、
その事実を拒み続けていた。


勇が居たから、
おれはまだ綺麗なままだったのに。
あいつが居なくなった今、
自分自身が浮き彫りになって
手が、心が、汚れてみえる。

それはきっと、洗っても洗っても
取れないこびりついた汚れなんだ。


『…勇、』

元気かな??


なんて言葉、空気を揺らす事なく消えた
元気だろうね。
ほら、バカは風邪ひかないって言うし。
(どういう意味だ)

ふふっと満足げに笑って止まっていた
足を前にゆっくりと踏み出した。


瞬間、見つけた。桃色に似合う淡い赤

それは、桃色を見上げて、
文字では表せない表情を浮かべていた。

うん。本能だよ、確実に。

同じ空気を感じたから。

おれのセンサー甘く見んなよ。わらい
なんて冗談だけど

キズモノの心は感知しやすいのかもね。
なんて冗談だけど

自嘲して笑った。


.

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