!恋人ごっこ
□紅い蓮
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俺は父さんと瓜二つらしい。
そのせいか解らないけど
母さんは俺によく当たる。
― ねぇ、母さん。
俺は知ってるんだよ?
俺の事が嫌いなのも、その理由も
全部、
全部、知ってる。
…直接言われたとかじゃないけど
環境のせいか、周りの反応がよく解る様になって
俺は、母さんの目で、声で、全部解ってたんだ
だけど気付かないふりをしてた。
…まだあの家が好きだったからかな。
けど、聞いてしまった
たまに寝れなくなって、
一晩中起きてる事がある。
その時、たまたま母さんの部屋の前を通ったら、声が聞こえてきた。
― 「雛、お母さんの事好き?」
自然に足が止まった。
…いや、動かなくなった。
母さんの声の後に、少し眠そうな雛の声が響く。
「雛は良い子ね。
本当に素直で良い子」
「おかあさん、は…ヒナのこと、すきぃ…?」
「うん。大好きよ」
「お母さんは雛だけで十分。
―…他はいらない位、ね」
―…知ってる。
母さんには
俺がいらない事も
いなくなってほしいって事も
だけど、
― ぽた
「ッ…―」
なんでだろう
涙が出る。
頭では解ってても、
実際に聞くのは思った以上に堪えるらしい。
― ホカハイラナイクライ,ネ
頭の中で繰り返される言葉
あぁ、やっぱり自分はいらない存在なんだ、って
涙を流しながら感じた。
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