05/28の日記

16:30
No.2 ファーストキス
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【数字と音符の鎮魂歌】No.2

★「ファーストキス」


ライヴが終了して数分後。
汗をかいたためTシャツを着替え髪を洗ったところで背後に人の気配を感じる。
振り向けばそこには、例の少年…

「おにーさん、王子様っていう人でしょ?」

「…さあ…どうだか」

「王子でしょ、さっき歌ってんの見てた」

「…知ってるよ。ステージからでも良く見えた…子供一人で目立ってたからね」

どうやら俺達の…いや、俺のファンらしい。
生憎子供は好きじゃない。うるさいし面倒だから。
ついでに馴れ馴れしいから…そしてこの少年も。

「今日王子んち泊めてよぉー」

案の定…家に泊めろという無茶を押し付けてきた。
断ると、耳を疑う発言。


「じゃあ、オレにチューしてよ!」

小学生高学年の少年は、どうやら若干「性」についてをネタにからかう年頃に突入しているらしい…。

「チューできないなら泊めてよね!」

小学生の男の子にキスすることはまずない、と少年も思っているらしく、してやったりな表情で宿泊する気満々な様子。
…実に、不愉快だ…。


「あのなぁ…大人をからかうもんじゃない」

少年はたぶん、いや確実にキスというものを知らないし味わったこともないだろう。
ライヴハウスのカフェ内にいるのは都合のいい事に少年と俺だけだ。
この生意気な少年の希望に満ち溢れたファーストキスを奪うというのも、なかなか悪くない。
大人をからかったことを後悔することだろう。

「キスっていうのは、いつするものかな?」

「んー…結婚式とか?」

「あぁ、そうだね。愛を誓う者同士の愛情表現のひとつで…とても大事なものなんだぞ」



「軽々しくキスをねだるもんじゃない、帰りなさい」

顔を真っ赤にして、目には涙を浮かべ余程ショッキングだったのだろうゴミ箱にぶつかりながら「バカ、変態、エロ!」と叫びながら去っていった少年。


あの時はまだ、お互い知るはずもなかった。

この日から数年後に
深く愛し合い結ばれようとは…



continue.

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