【裏縞(うらしま)】という村に住む,太郎という少年がおりました。


その日,太郎のもとへ小包が届きました。


宛名は「乙」となっていました。



「…乙?……誰のことであろう」



太郎には全く身に覚えがありませんでした。


小包を開くと,中から立派な玉手箱が出てきました。



「これは,お金になりそうだな」



太郎は嬉々として玉手箱をひらきました。



「なっ!?」



あけた途端,中から煙が溢れ出しました。



「…ゲホゲホッ。……これは!?」



煙が晴れると,太郎は驚きました。


玉手箱を持つ手が,しわくちゃになっていたのです。

顔に手をあてると顔もしわだらけ,あるはずのなかった髭がありました。



「こんな…こんな…」



太郎が呆然としていると,地面に落ちている紙片に気づきました。


紙片には,こう書かれていました。









『先日のお礼です。
乙』











その言葉で太郎は,はっとしました。


思いあたるのは,竜宮城での出来事。


太郎は竜宮城で豪勢なもてなしを受けました。


しかし,太郎は好きなだけ飲み食いをすると竜宮城から宝を盗み立ち去ったのでした。



「乙姫という名だったのか…」



いっきに歳をとった太郎は,その後お金には目もくれず静かに暮らしていったそうです。




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