【裏縞(うらしま)】という村に住む,太郎という少年がおりました。
その日,太郎が浜辺を通りかかると子供たちが亀をいじめておりました。
太郎は子供たちを怒鳴りまさた。
「亀をいじめてはならぬっ!」
「「「うわぁっ!!」」」
その怒声に驚いた子供たちは,走って逃げていきました。
「どうもありがとうございました」
「当然のことをしたまでだ」
太郎の言葉に深く感銘をうけた亀は,こう言いました。
「ぜひ,お礼をさせていただけませんか?」
「礼?」
「はい。竜宮城でおもてなしさせて下さい」
亀の言葉を聞いた太郎は,表情には出さず心の中でほくそ笑みました。
太郎は,亀が海の底にあるといわれる竜宮城の使者だと知っていたのです。
「…そんなつもりはなかったが,せっかくの誘いを断るのも良くないな」
太郎は白々しくそう答えました。
「では,私の背にお乗り下さい」
太郎が亀の背に乗ると,亀は海の中へ潜っていきました。
不思議なことに水中でありながら,呼吸ができました。
しばらく潜って行くと,美しい城が見えてきました。
「(…きっとあれが竜宮城だろう)」
城の入り口におりると,供を連れた姫が待っておりました。
「ようこそいらっしゃいました」
竜宮城の姫はとても美しい方でした。
しかし,太郎は姫自身のことなど眼中にはありませんでした。
目を奪ったのは,姫が身につける輝かんばかりの宝石でありました。
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