文
□ 手帳
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「雪乃!」
ドアを開けると友人が立っていた。
「来ちゃった!今、一人?」
「一人だけど、どうしたの?こんな時間に。」
「亜莉子と年越ししたくて!」
うふふ、と友人が笑う。その一言に亜莉子は思わず涙が出そうになったが、ぐっとこらえて友人を家の中に招き入れた。
「わぁ!こたつ!」
「雪乃の家はこたつないの?」
「ないない!わぁ、ぬくぬくする〜。」
「雪乃、はしゃぎすぎ!」
「なによー。えいっ!」
「ちょっと、人の家の座布団投げないの!もーう…えい!」
「痛っ!やったな、反撃!」
「やだ、降参降参!」
二人で声をあげて笑い合う。
人が一人増えただけでこんなに家の中が明るくなるものなのか、と亜莉子は驚く。同時に、こんなに大好きで気を遣わない友人がいたのに、なんで遊びに誘わなかったのだろうと後悔した。
「ねぇ、雪乃は冬休みの予定、もう埋まっちゃった?」
「まさか、そんな事ないわよ。」
「本当に?ねぇねぇ、じゃあいつが空いてる?」
と言って、亜莉子は真っ白なスケジュール帳を取り出した。友人にカラーペンを持たせて、雪乃が遊べる日に印つけて、とお願いする。
「遊べる日?う〜ん。」
友人は少し考えてから、1月のページ全面に大きく丸を書いた。
「何これ?どういう意味?」
「私はいつでも空いてるから、毎日遊べるよ。」
「毎日?!それじゃ私達、まるで家族だよ。」
「いいじゃない。私にとって亜莉子は家族みたいに大事だよ…って、ああ!亜莉子、十秒前!カウントダウン!」
「えぇ!」
「ほら、九、八、…」
近所の神社で初詣を終えた由里が夜中に帰宅すると、亜莉子がこたつに突っ伏して寝ていた。座布団の散らかった部屋を見て、やっぱり友達と過ごしていたのね、と呟くと着ていた上着をそっと亜莉子の肩に掛けた。
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2010/01/03
兎アリ。
ふとした瞬間の母の優しさ