文
□ 赤い海
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アリスに尋ねられて、一つ疑問が生まれる。
“あんな幻を見せて、この海はどのように僕を惑わせ引きずり込みたいのだろうか”
確かに存在するアリスと、幻のアリスとの間で、僕を悩ませたいのだろうか。
思考を巡らせていると、僕が悩んでしまったと勘違いしたのかアリスが心配そうに、冗談よ、と言った。
強い風が吹き、アリスが短い悲鳴をあげスカートを抑える。
「アリスはアリスだよ」
「…意味が分からないわ」
と、また彼女がクスクス笑う。
正直なところ、自分でもよく分からない。ただ、例え幻のアリスだとしても、僕は区別がつかずに幻の望むままに行動してしまうのだろう。
…アリスにそう伝えたら、きっと頬を膨らませていじけるだろうから言わないけれど。
「ねぇ、チェシャ猫?」
「なんだいアリス」
「私は本物でしょうか、偽物でしょうか、どっちでしょう?」
「君はね、――…」