□君想う日々
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「おぃ、アカギ!起きろってば!」

「…ん」

アカギはカイジの声で目を覚ます。真っ暗な視界に光りが現れ、ひんやりとした空気が頬を撫でた。視界を横にやると、カイジがぎこちない姿で野菜を切りながら、チラッとこちらを見た。

「おはよ、昼飯出来たから早く顔洗ってこい」

「…おはよー、カイジさん」




ここに来て何日たったのか……。






気が付けばアカギは、全く見覚えのない建物が並ぶ街の真ん中に立っていた。ここが何処なのかわからずウロウロと歩き回っていると、突然チンピラに絡まれた。喧嘩にはそこそこ自信があったし、負けるつもりもなかった。しかし、一人で相手するには、あまりにも数が違いすぎた。一つの攻撃を避けても、新たな攻撃が次々と自分に向かってくる為に、アカギの動きは追い付けず、あっという間に肌が赤く染まった。
このままでは危険だと感じたアカギは、チンピラの一瞬の隙をみて一気に駆け出した。右も左もわからない街の中、ただひたすらに走っていると、突然薄暗い脇道から腕をつかまれ引っ張られた。
「なっ…!?」

「静かにしろっ!見つかっちまうだろっ!」

(薄暗くて顔が見えない…。誰だ…?これは髪の毛…女…?)

すぐにでも確かめたかったが、チンピラ達の声が聞こえた瞬間、今は奴らから逃げ切るのが先だと考え、アカギは静かに闇に姿を隠した。

チンピラ達の声が聞こえなくなり、空には小さな月が、雲の間から顔を出した。その光りで、自分の隣に立つ人間の顔が現れる。

「……あんた誰?」

「いきなり引っ張って悪かったな、逃げ切れたみたいで安心したぜ…」

「…何が目的?」

「目的…?何だよそれ…、ガキがチンピラに追い掛けられてたら、助けるのは普通だろーがっ!」

「…ククク、ガキねぇ」

「ガキだろーがっ!それ、学校の制服だろ?こんな時間に何してんだょ」

「それが、自分にもよく分からなくてね、何が何だか…」

「はぁ?つーか、なんで12月に夏服着てんだょ、寒くねーのか?」

「12月…?今日は何月何日?」

「ぇ?12月8日だょ」

「………西暦は?」

「えっと…2009年」

「………あんたの名前は?」

「…伊藤…開司だ…」

「カイジさん、どうやら俺は未来に来てしまったらしい…。タイムスリップってやつかな…」

「…………………………はぁ?」

「行くとこないし、金もないから、今夜はカイジさんの家で泊めてよ」

「………………………………へ?」


これが、この世界とカイジさんとの出会いだった――。

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