お話の部屋T

□夜ノ音色
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ちり‥‥り‥
‥‥‥り‥‥りん‥‥

風が吹く度に、外から優しい音色が聞こえる…
(風で鳴る、鈴……)
風鈴、と言ったか。


昼間、こまちとかれんが‘明日の祭りに是非着て’ともってきた箱に、服と一緒に入っていた。
地味な色合い
鉄でできたそれは釣り鐘を思わせて――
テレビや写真でよく見かける、硝子に 金魚や朝顔の描かれている可愛いらしい姿とはあまりにも違い過ぎていた。

「あら、これも風鈴よ」
手に取って、首を傾げていたココに かれんが笑いながら答えた。
「…なんだか渋いね」
「音が綺麗に響くの……
うちのお店のお得意さんが、手作りで作っていてね。
とっても良い音だから、ココさんもナッツさんも、きっと気に入ると思って……」
「ふぅん……」
こまちの言葉を受けてゆるりと揺らすと、少し低い響きを持って、優しい音が ちりり… と鳴った。
「……落ち着くな。本当に良い音だ……」
ナッツが目を閉じて、小さく呟いた。


ミルクは可愛い方が良いなんて、ちょっと不満げだったけど、結局ナッツの意見で こまちからの風鈴は ベランダに吊されることになった。
そして、その音は、ナッツの寝室によく聞こえてきた。



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