お話の部屋U

□THE DAY BEFORE THE BEGINNING OF SPRING
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【NATTS】

「よし いいぞ。ぶつけろ」
節分の夜、鬼役はくじ引きでナッツに決まったが――
「どうした?
遠慮するな」
スーパーで買ってきた福豆に付いていたへんてこな赤鬼のお面を付けたナッツは、さぁ来いというように両腕を広げた。
「だって、ねぇ?」
「メエ〜〜」
「何て言うか……やりにくいっ!」
「ぶつけろなんて言う鬼は、ちょっと」
「?」
「もっと鬼らしい方が良いと思うのよ」
「そうですわ、ナッツ様。みんなの言う通りですわ」
申し訳なさそうに、くるみが相槌を打つ。
「鬼らしく……どうすればいいんだ」
「“ガオー”とか“ウオー”とか大声を出して、びっくりさせたらいいんじゃないでしょうか?」
「……がおー……」
「怖くないっ!!」

ああでもない、こうでもないと少女達に指摘され、ナッツは困ってココを見た。
「伝統行事というのは難しいな」
「まぁ こうゆうのはノリが大切だから」
真面目過ぎるナッツには不適任だったかも、とココはもうひとつの青鬼のお面を手に取った。
「じゃあ僕達ふたりで鬼をやるよ。
それでもいいだろ?」
「ココ」
「いいのいいの。
あ、くるみもちゃんと豆を投げるんだよ」
少し畏縮しそうになるくるみに目ざとく釘をさす。
「は……はい」
「厄払いなんだから、遠慮することは無い。
オレも精一杯やらせてもらう」
ナッツもくるみに優しく微笑むと、少女達を見回した。
「そうそう!
今年一年 みんなが幸せでいられるように バーンとやっちゃおう!
けってぇ〜い!!」


その数分後――
「痛いココ〜!」
「も……もう勘弁ナツー!」
容赦なく浴びせかけられる豆に耐えかねて、小さな姿に戻ってしまったふたりがいた。
「う〜〜ん。
これで今年一年 み〜んな幸せだね!」
「のぞみっ!シロップもっ!
やりすぎよ!
ココ様とナッツ様に
謝りなさーい!!」


・・・HAPPY?
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