Euthanasie.

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さようなら。
どこかでそんな声が聞こえる。
誰に向かって、いったい何を。
こんにちは。
思わず私は口走った。
走りながら、囁くように、走りながらだよ


「待って.....なんて言えないよね」

重たく感じるローブを握り締める。
すべてが緑色の象徴的背景。
その中で前方を走る白ウサギ。
禁断の森にこんなに入り込んだのは初めてで理性なんか捨ててしまった私は、そこに焦燥や不安なんてありはしない。
ただ本能的に。
追いかけて、別に捕まえたい訳じゃない。
届かない、でも淋しくはないこの距離を、私は子供のように楽しんでいた。

ウサギの表情は見えない。
いつの間にか日のあたらない、深い深い森の中にまで行き着いてしまったようだ。
息が切れてくる。
肺が重い。
金色の昼下がりはどこだろう。
わたしは、そこにいきたいの。



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