Euthanasie.
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「リリー、貴方に手紙よ」
昼食のラザニアをオーブンから取り出していると、ポッピーが庭から摘んできたムギワラギクを生けながら声をかけてきた。
顔を上げると、ちょうど七月の陽光を運ぶ生暖かい風と一緒に一羽のフクロウが居間に現れたところだった。
ずいぶんと羽のぼうぼうなフクロウだ。
それはふらふらと居間に入り、私のもとへたどり着くことなく、そのままカウンターの角に激突して真下にあったゴミ箱にぼとりと落ちてしまった。
「えぇええ」
慌ててラザニアを皿へ移し、ゴミ箱から抜け出そうと悪戦苦闘しているフクロウの元へ駆けつける。
ポッピーもムギワラギクをテーブルに置いたまま、彼の救出に取り掛かった。
随分と高齢なのか、覆いかぶさる紙ごみを避けることもできずに、ぐったりと灰色の羽を投げ出していた。
2人で何とか助け出すと、手紙はそっちのけでフクロウを椅子に横にさせる。
「随分とお疲れの様子ね....」
ポッピーが顔を引き攣らせながら言う。
水を張ったトレーを嘴の近くに置きながら、私はこれがどこの家のフクロウか、何となく検討が付いた。
そういえば、フレッドが前に言っていた気がする。
「ああ、やっぱりウィーズリーのところのフクロウだ」
手紙を手に取り、宛名を見て一人納得する。
そして徐に杖を取り出して、細心の注意を払いながら手紙を開いた。
「フィニート!」
手紙を開いた瞬間、ピンク色の閃光が私目掛けて飛んでくる。
杖を取り出してからずっと怪訝そうに見ていたポッピーが目を見開いた。
呪文が私に降りかかる直前に、杖を振ってなんとか阻止する。
双子の嫌がらせにまんまとかかってやるほど私は優しくはない。
「....手紙の内容は?」
ポッピーがフクロウの方に意識を戻しながら聞いてきた。
フクロウはぴくぴくと足を痙攣させながら、ちびちびと水を飲んでいる。
何とも痛ましい姿だ。
手紙の内容は、休み前から言われていたウィーズリー家への招待だった。
「ウィーズリー家から招待されちゃった。
あと、ハリーとは変わらず音信不通らしいよ」
ハリーの音信不通は休み中ずっとだ。
手紙を幾ら送っても返事はなく、試しにマグルの方法でも手紙を送ってみたけど、それすらも返事がなかった。
「ウィーズリー家からご招待?
丁度よかったわ、来週から私はホグワーツに戻らなくちゃいけなかったから」
「そうなの?」
「校医は休みだろうと学校に残るものよ」
貴方が来たときだっていたでしょう?と笑われて、そういえばそうだったかもしれないと、笑い返した。
「ウィーズリーの方には、私からお礼を書いておくわ」
「一緒に過ごしていることを言ってもいいの?」
「親戚ってことにしておくわ」
フクロウに簡単な薬を飲ませながら、ポッピーがさらりと答える。
「食後に、荷物を詰めなくちゃね」
彼女の言葉に、すっかり冷めてしまったであろうラザニアのことを思い出した。