Euthanasie.
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「リリ−、久しぶり!」
休暇中、音のなかった部屋に懐かしい声が響いた。
明日は新学期。
その前日にハーマイオニーが帰ってきたのだ。
「久しぶり、ハーマイオニー。
クリスマスプレゼントありがとう」
ふわふわの髪の毛を揺らしながら飛びついてきた彼女を抱きしめる。
一瞬、歯磨き粉の澄んだ香りがした。
「リリーこそ、プレゼントありがとう!
ママもパパもおいしいって言ってたわ」
ハーマイオニーが抱きしめていた腕を緩めて、にこにこと頬を上気させながら満面の笑みで言った。
グレンジャー家に送ったのは日持ちのするクリスマスマフィンだ。
本当に嬉しそうな顔をするからちょっと恥ずかしい。
「ありがとう。
ハーマイオニーのプレゼントも嬉しかったよ」
はにかんで答えると、彼女も釣られてはにかむ。
でも何かに気付いたのか、きょとんとした顔で尋ねてきた。
「リリー、香水をつけたの?」
「え?」
香水?何の話ですか。
分からないという顔をしていると、彼女が肩越しに匂いを嗅いできた。
変態みたいですよ、グレンジャーさん。
「ほら、薔薇の香りがするわ!」
「えええ」
香水なんて洒落たものつけてないのになんでー。
ていうか、いい香り!とか言いながらくんかくんかし続けるこの子ちょっと危ないよ!
「香水つけてないよ?
だから、うん。ちょっと離れようか」
まさか11歳の少女にこんな大胆に匂いを嗅がれるとは思わなかったよ。
お父さんにも嗅がれたことないのに!
「あら、じゃあ石鹸かしら」
漸く離れてくれた親友は、まだ気になるのか追求してきた。
石鹸もシャンプーも変えてないと伝えると、腑に落ちないといった表情で聞いてきた。
「リリー、隠しごとしてない?」
「ううん」
「....恋でもした?」
女の勘って怖え。