Euthanasie.

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「ポッピー」

「何?リリー」

医務室で宿題の呪文学を続けながら、私はぼんやりとした顔で目の前のポッピーに話しかけた。
ポッピーは薬品棚のストックを確認しているらしく、魔法をかけた羽ペンに記入させている。

「私の腕、まだ治らない?」

ハロウィンで骨折した左腕を徐に見る。
包帯はまだ取れないけど、包帯を替えるときに見た腕は以前と変わらないくらいに回復していた。
痛みもないし、違和感もない。

「複雑骨折していたのよ?
まだ安静とはいえないわね」

記入が終わったのか、羊皮紙をくるくると丸めながらこちらへと視線を向ける。
自分の怪我の重度を分かっていないの?と言いたげな瞳に、つい苦笑してしまった。

「どのくらい掛かる?」

「金曜日の午後までかしらね」

「よかった」

すると、ポッピーは何か用事があったの?と意外だとでも言うように尋ねてきた。
用事というほどのものではないけど、でも出来たら参加したい行事だ。

「今週の土曜日、クィディッチがあるでしょ?
友達の初試合なの、応援したいんだ」

クィディッチと聞いてポッピーはあからさまに嫌な顔をしたけど、変わらずに笑って言う。
こちらへ歩いてくる彼女の背後の白いカーテンから肌寒い11月の空が見えた。

「じゃあ今度は友達の看病をしにここへ入り浸るかもしれないわね」

「ふふふ、そんなこと言わないでよ。
ハリーは素敵なシーカーよ」

彼女が生徒の怪我に神経質なのは、それは深い生徒への愛情だと知っているから、特に怒らない。
ただ正直な話、もう自分は安静なんじゃないか、と疑問は膨らんでいくばかりだった。

「リリー、いる?」

ハーマイオニーの声が医務室の入り口から聞こえた。
ポッピーが先程までの柔和な顔をすぐさま厳格なものに変えて、何の用事かと彼女に聞いてくる。
ハーマイオニーの後ろにハリー達もいて、柄にもなく嬉しかった。

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