Euthanasie.
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はぁ、と溜息を付いた。
子供の喧嘩に入る気はなかったんだけどなぁ。
そう思いながら、結局入り込んだ自分を笑った。
三頭犬と遭遇した次の朝、ハリーとロンは反省していると思いきや、上機嫌で大広間へと現れた。
少年の心とは常に冒険に満ち溢れてるらしい。
到底理解不可能な思考に、その日の朝はカモミールの香りをロクに楽しめなかった。
ハーマイオニーはそれ以来、ハリー達とは一切口を聞かなくなっている。
それに関して横から何かを言うつもりはないけど、ハリー達の膨らんだ冒険心が彼らを怪我させてしまいそうな気がした。
「おはよう」
席に着いたハリーとロンに挨拶をすると、目の下に若干の隈を残した顔で挨拶を返してきた。
その表情が爽やかだったからちょっとむかつく。
「おはようリリー」
「昨夜は大変だったみたいだね」
お疲れ、と言うと一瞬驚いた顔をした後に、ロンは朝食を食べ終え本を読んでいるハーマイオニーを睨みつけた。
おい、怒るのは違うでしょう。
「感想は?」
早く彼の視線をこちらに向かわせたくて、急いで質問をした。
彼女に朝から不快な思いはさせたくない。
「すごかったよ!
リリーも今度見に行こう」
反省の色なしか。
眉を顰めて彼を見ると、ロンも面白くなさそうに顔をあからさまに歪める。
「何だよ、その顔。
君もそいつと同じことを言うつもりかい」
ハリーも敵意の目でこちらを見る。
本の端からこちらを伺うハーマイオニーの不安そうな瞳が、ちらりと見えた。
「別に昨夜のことに何か言うつもりはないよ。私、部外者だし。
でもね、校則を破って命の危険に陥ったことを、戦線から帰還した英雄のように自慢気に話すもんじゃないよ」
すっかり冷えてしまったカモミールをかき混ぜる。
くるくると回るスプーンが理性と本性を混ぜこぜにしているみたいだった。
ロンの睨みが一層強くなる。
「君には分からないだろうよ」
「分からなくていいよ。
ただ、心配なだけだから」
私がふわふわと笑いながら答えると、ロンは意味が分からないといった表情で私を凝視した。
まあ、そうだろうなぁ。
「友達が傷つくのはいやだもん。
だから心配してるの」
彼女もそうだよ、と言えばハーマイオニーは直ぐに本から顔を上げて否定した。
「君らには関係ないじゃないか」
「リリー、私は心配なんかしてないわ!」
左右からくる非難の声に私はとうとう笑ってしまう。
私にもこんな子供時代あったかなー。
「いいんだよ。
存分に心配されてなよ」