Euthanasie.
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それからというもの、私はハーマイオニー、ロンのどちらにも付かずにただ2人の間を行ったり来たりしていた。
仲直りさせる気も溝を深める気もない。
ただ純粋に友達として今まで通り接した。
「リリーってさ」
「ん?」
談話室でハリーとシェーマスのレポートを手伝っていると、徐にハリーが呟いた。
ハーマイオニーは予習のために図書館へ、ロンは双子にいじられている。
偶々2人共いなかった。
「損な役回りだね」
隣りのシェーマスが、その言葉に羽ペンを置いて考え始めた。
いや、お前らは早くレポート仕上げなよ。
「例えば?」
「魔法薬の授業とか」
シェーマスが隣りで頷いた。
それにハリーが続けて口を開く。
「リリーは誰よりも魔法薬が得意なのに、最初の授業でスネイプに目を付けられてから、いつも減点されてるよ」
確かに、授業のたびに何かと私ばかり注意して、寮の点数をどんどん減らしていく。
その減点理由も、随分とハードルが高いもので、他の生徒で守れている人はいないものばかりだ。
でも、最初に啖呵を切ったのはこちらだし、ハリー達には知らないそれ以前の事情もある。
「でも、私から始めたものだからね」
「あと、パーキンソンのこともさ」
その名前を聞いて、確かに顔を歪めた。
パーキンソンには確かに参っている。
何が気に触ったのか、最初の飛行術の授業のあとから陰湿な嫌がらせを受けている。
ありもしない私の噂の発信源は、間違いなく彼女からだ。
「この前、リリーはマグルの孤児院から来た哀れな子だって大広間で話してたよ」
私が家族の話をしないことをからかって、そんなことを言ったに違いない。
確かに私の家族はここにはいないし、向こうの世界にも肉親はいないから、もしかしたら孤児院にいた時代もあったのかもしれない。
でも哀れとは微塵も思ってない。
「パーキンソンも、きっと私が気に触ることを言ったからそんなことを言ってるんだよ」
「でもあの女、本当に性格悪いぜ」
シェーマスが目一杯顔を歪ませる。
変な顔、と額を小突くと彼はまだ納得のいかない表情のまま、私を見つめる。
ハリーがレポートを無表情で見つめながら、ポツリと呟いた。
「今回のロンとハーマイオニーの喧嘩だって、挟まれて息苦しいでしょ?」
「確かに息苦しいけど、私から始めたことだよ。
2人共、大切な友達だしね」
「そこが損だって思うんだけど」
確かに、損なのかもしれない。
でもスネイプの件は、先生の嫌がらせの矛先がハリーから少しでも外れればいいと思ったから自分でやったこと。
パーキンソンだって、これ以上マグル差別を他の生徒にしてほしくなかったからだ。
ハーマイオニーとロンだって、2人が心にもない言葉をお互いに降りかからないようにと、自分の意志でここにいる。
「そもそも損って、一体何の?」
「そんなの、自分に対してだよ」
「じゃあ損じゃないよ」
その言葉にハリーとシェーマスが同じ顔して呆けているいるから、くすくすと笑ってしまった。
「損か得かは、私が決めることだもん。
私にとってそれらは全然損じゃないよ」
とにかく、レポート終わらせろー。そう言って会話を中断させた。