乱世巡り。

□◇山小屋の老人。
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こんな山奥までよく来たのう。
さあさ、上がっとくれ。
熱い茶でも持って来よう。




さて、この山には何をしに来たのかの?
この山を荒らすと呪われてしまうぞい。
過去や未来、そして今。
人が"時"と呼ぶモノに。



ああ、持て成せん代わりにこの老いぼれがある話をしようかの。聞いとくれ。


昔、昔の話じゃよ。





ある過去に、少女がおった。
明るく、強く、平凡に生き、その生涯を終える筈じゃった。
じゃが、何かが欠乏しておった。
そして少女はそれに気付いておらんかった。
心の何処かでそれを望んでいたことにも、気付いておらんかった。



そしてそれよりも更に過去、辛い時代が在った。
恨み、憎しみ、哀しみ、裏切り。
其処はそれらで溢れておった。
其処ら中に死が落ちておったのじゃ。

少女と同じく、其処は何かが欠落しておった。
乱れた世に黒を塗り、無闇に死を望む時代じゃった。




そしてある夏の、とある過去の少女が、
とある過去に飛ばされてしもうた。
運命の悪戯か、はたまた神の成す業か。
それは今だ誰にも分からんままでの。

じゃが、少女にもその時代に生きる者共にも、それは良い変化じゃった。





そんな、少女と時代の話をするとしよう。




夜もまだ、明けぬじゃろうて。





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