□僕は今日も。
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俺は忍だ。
常に主の為に、常に道具で。
常に心を殺して。




『佐助』




主と同じ様に、俺を呼ぶ声。
耳に残って、離れてはくれない。




『佐助』




いつも笑顔で、俺を呼んで。


主でもないというのに、護りたいと。
強く強く、渇望して。


なのに俺は、出来なかった。
その声を持つ彼女は、俺の主ではないから。

俺は主の為だけに、存在しているから。
俺は自我で動いてはいけないから。
自我なんて、必要ないから。


護れなかった。
こうなると直観したくせに動けなかった。
忍であることが、足枷になって。
だから俺は動けなかった。
動かなかっただけなのかもしれない。
だって本当は動けたんだ。





忍は忍にしか為れないんだと悟った。




心配かけまいと、気にしてはいないと、表面だけで笑って。
嘘の笑顔を作って顔に塗ったくる。




「だーいじょうぶだって、旦那」



へらへら、へらへら。

大丈夫なんかじゃないくせに、




「旦那が笑ってないとさ、あの子が心配するでしょーが」




小さな嘘を重ね続けて




「俺様なら大丈夫
だから旦那も、笑ってやんな」




俺は今日も、心を殺す。















→後書。



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