父が死んだ。

弟が泣いた。妹たちが泣いた。兄が泣いた。

兄が泣くのを初めて見た。声を上げずに涙を流していた。まるで自分が泣いているのに気がついていないようだった。

兄はますます神経質になった。唇を固く結ぶようになった。

父の事故から兄は常に焦燥と渇望に追われていた。

もう父はいないというのに兄を閉じ込めた籠の鍵は強固になるばかりだった。

兄はむしろ進んで閉じ込められているように見えた。

その方がきっと幸福なのだ。鍵が開かれた時、或いは壊された時、その瞬間あまりにもながい間閉じ込められていた鳥は瓦解していくのだろう。

けれど固く閉じられた籠の中の鳥に誰が餌をやれるというのだ。それをできる唯一の人物であった鳥の主はいなくなってしまった。あまりにもあっ

けなく。

餌も水も与えられない鳥は籠の中で少しずつ痩せ細って、ある日ついに息絶えるだろう。外界で生きていく手段を、この鳥は知らないので。

ああ、哀れな鳥よ!おまえはなんと馬鹿なのだ!







2010-01-30

やまとかおちとかいみとかなくてすみません。ラドモーズ→イドリス好きです。きょうだい・・・!

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