Novel

□それは恋でした。
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最近調子が悪い。

観察対象にしてるあの子、竜ヶ峰帝人に会ってからだろうか。



帝人君が…
誰かと笑っている時
誰かに触れられている時
誰かと喋っている時



イライラ……―

知らないうちに、訳の分からない感情に支配される。



この気持ちはなんだ?




「あれ、臨也さん」
「偶然だね。帝人君」

偶然、帝人君に行き会った。

今まであんなに心を支配していたドス黒い物がスッと跡形もなく消える。


有り得ない、有り得ない…


「ちょっと来て」
「え?…わっ!?ちょっ!」


俺は衝動のままに誰もいない路地裏に連れ込み、帝人君の背中を壁に付けて首にナイフをあてがう。帝人君は恐怖で俺を見つめてくる目にゾクリと歓喜に似た何かが身体中に走り、それさえも俺にはあり得なくて笑いが込み上げる。



「ど…した、んです…っ?」
「ははっ。帝人君、君のせいで全てが狂っちゃった。まったく可笑しいよねぇ」
「何……言って…」
「……俺さぁ、帝人君と会ってからイライラするんだよ。他の誰かと仲良く笑ってる君を見てると、君と仲良くしてる人間を殺したいと思っちゃうし。イライラするからって帝人君を避けてるともっとイライラする」


帝人君の首に当てていたナイフを力一杯壁に振り下ろして、俺は鼻が触れるぐらいに顔を近付けるとビックリしたのか目を見開き、恐怖で溜まった涙が一粒ポロリと頬を伝う。俺は伝う涙を舌で舐め取って帝人君のいつもより水分を含んだ目を見つめながら言う。






「この感情って何ていうか、帝人君は分かる?」



帝人君は少し迷ったように言葉を一瞬詰めたが、何かを決心したように少し震えた唇が声を発するために開く。






帝人君が答えをくれるまで


―――――あと、10秒。


END.


それはでした。
(責任取ってよ。…ねぇ)


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