Novel
□幸せ、ですか?
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自分は幸せになってもいいのか?
首のない妖精は思った。
今まで生きてきた中で、私は一番幸せだと感じている。
大切な親友がいて、大好きな人がいるこの生活。
だが、たまに思うんだ。
このまま私は幸せの中を生きていていいのか?と
とある満月の日。
久し振りに悪夢をみた。今まで見たどんな悪夢よりも恐ろしく、冷たい夢。
満月だけの光に照らされていると、奥の方から足音がした。
「こんな遅くにどうしたんだい?」
目を擦りながら眠たそうに新羅が私の座っているソファーへと歩みよる。
『すまない新羅。起こしてしまったのか…』
「うぅん、大丈夫だよ。それよりまた悪夢をみたの?」
『……あぁ』
知らずに肩が震えていたらしく、新羅は私の隣に座って優しく抱き締めた。
………胸が締め付けられた。
死なない自分の体に心臓があるのかも分からないのに私の心臓はツキンと痛んだ。
幸せだ。
私は新羅がどうしようもなく、大好きだ。
ツキンツキンと脈を刻むたびに、心から閉じ込めていた感情が溢れてくるのが分かった。私は新羅の袖を引っ張ると、新羅は「何だい?セルティ」と優しく囁く。
『私は…今、幸せだ。でも怪物に「幸せ」は許されるのだろうか』
そう伝えると新羅は月の光だけが差し込む部屋の中で笑い、私の手を握る。
「セルティはこの世界で存在してるじゃないか。だからセルティにも幸せになる権利はあるよ」
『……分からない』
「幸せに理由なんていらない。君は今幸せと感じているかい?」
『……あぁ』
「なら大丈夫」
……ツキン…
また心が何かに締められる。
決して痛くない。
甘くて苦しくて、幸せな痛み。
「セルティ…愛してる」
『ばぁーか』
短く打った文章を新羅に見せた後、片手に持っていたPDAを座っていたソファーへと置き彼の背中に両手を伸ばし抱き締めると、少し経ってから優しい体温が私を包んだ。
END.
幸せ、ですか?
(はい。貴方と一緒ならば)
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