Novel

□RAIN
1ページ/2ページ




来良からの帰り道。
今日は朝からずっと雨。
久し振りにこんな天気になったせいか、"バケツをひっくり返したような雨"という表現がぴったりなぐらいのどしゃ降りだ。
帝人はあまり雨が好きではないので、こういう日は何となく気分も下がる。




「あ、帝人君」


聞き慣れた声がしたので、目線を上げると何故かこのどしゃ降りにも関わらず傘をさしていない臨也が悪天候の中、立っていた。


「…何で傘さしてないんです?」
「んー…気分、かな?」
「どんな気分ですか。まぁ、そのままだと風邪引くんで僕の家に来ます?拭くものくらいは貸しますよ?」
「うん。…ありがと、でも別にいいんだよ?俺も好きで雨に濡れてた訳だし」
「…え?」


ここで普通は、図々しいほど当たり前かのように着いてくるあの臨也が珍しい帝人の誘いを断った事に内心ビックリしていた。思い返してみても、これまでなかったパターンである。


「い、いいから!」
「わ。ちょっと、帝人君!?」



今までと違う態度に、心のどこかで焦った帝人は半ば強引に臨也の手を引いて家につれていく事にした。家に着くとタオルを出して少し乱暴に臨也の頭を拭く。




「いたたた」
「…ぁ、……す、すいません」


無意識に頭を拭いていた手に力が入っていたようで、臨也は苦笑いをしながら此方を見ていた。



「どうしたの?今日の帝人君おかしいよ?」
「……貴方がおかしい、から」
「ん、俺?あぁ、…なんか今日夢見が悪くって…ね」
「夢?」
「そう。…ある意味幸せで、ある意味最悪な夢だったんだ」


いつものようにニコリと笑った臨也だったが、帝人には何処か哀しそうに見えた気がした。夢の内容が気になったので聞いてみる事にした。


「うーんと。なんかね、いつも通りの池袋の中を俺が歩いてるんだ。歩いていると、人がいつも以上に面白く見えてスッゴく嬉しい気分になるんだよ。そこまでは最高の夢。でも、ふと帝人君に会いたくなったから帝人君の家に行くと何故か家のドアは開いてるのに君は居なくて無用心だなぁと思って学校にも行ってみたけど、やっぱり帝人君だけがいなかった。街の中を捜し回るんだけど……見つからない。まるで最初から竜ヶ峰帝人という存在自体いなかったみたいに、さ」


帝人はその話を真剣に聞いていると、グイッという引っ張られる感覚が急にきて首元と背中に温かいモノが触れる。ソレは臨也に抱き寄せられたのだと少しあとになって気付く。


「それが、……凄く怖かった」


珍しく、弱々しい声を発した臨也が泣いているように思えて顔を覗き込むが見えず、背中に回っている手を震わせるのを感じ、帝人は少し戸惑いながらも抱き締めてくる臨也の頭を優しく撫でる。



「……今日の帝人君…優しい」
「…だって………いえ、やっぱり何でもないです」
「クスクス、…おかしな帝人君」


帝人は言い掛けた言葉を飲み込んで、臨也を抱き締め返した。



「…帝人君」
「?…なんですか?」
「んー、呼んでみただけ」
「…そ、うですか」
「……………帝人君、」
「今度はなんです?」
「…大好き」
「!?……ぅ…////」

「クス、心臓の音凄いよ?」
「ぅっ煩いですっ!」

いつもの調子に戻ったようで帝人をからかう臨也だったが、相変わらず抱き締めてくる腕は外す気はないらしい。でも帝人は、このままでもいいかと今日だけは思った。



目を閉じれば、未だに外はどしゃ降りの雨でザァザァと水の音が煩いほど聞こえている。





(明日は、晴れたらいいな…)



、なんて願った。








RAIN


(きっと、)
(涙を流せない貴方の代わりに)
(空が涙を流しているんだね)




END.
あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ