Novel

□緊急ストッパー
1ページ/2ページ





「死ねぇ!ノミ蟲!!」
「嫌だよ。シズちゃんが死ねば全て解決する話じゃん!」
「お前が死ねばいいだろーが!」
「はっ!全力で拒否するね!」





この学園、私立来良高校はハッキリ言って普通ではない。それどころか、一般人から見たら人間が通っているのかすら疑うのかもしれない。


「いーざぁーやぁー!!!!」
「ははっ、暴力はんたーい」
「今日こそ、世界から消えてもらうぞ!!ごらぁー!!!!」


ガッシャーン!!!!!
ガラガラ


「おー今日も派手にやってんなー…先輩方達は」
「今日は物が空を飛んでないから、標識だけなんでしょうか?」
「まぁ、マシな方じゃね?」
「そうですね」
「毎回毎回、飽きもしないで喧嘩してるよ…。臨也さんも静雄さんも」



今喋ったのは帝人、杏里、正臣の3人。彼らはこの学校の1年生。

会話からあり得ない事を言っているようだが、来良高校ではソレがあり得る。例えば、空中に舞う物が自動販売機だったり街灯だったり標識だったり…。怪物が暴れているのではないかと思ってしまうだろうが、見た目だけは、いたって普通の人間である。


「死ねぇえぇええ!!」
「シズちゃんが死ねばぁー?」
「あぁ"!?」


いつものように同じ言葉を繰り返す2人。静雄は耐えきれなくなったのか、額に血管を浮き上がらせて持っていた標識を槍投げをするかのように構える。


「帝人、止めてこい」
「……えー…めんどいよ…」
「先生には何とか言っとくからよ。それにアレはお前しか止められねぇーんだからさ」
「……わかった」

今まで遠くから見ていた帝人は面倒くさそうに喧嘩中の臨也と静雄の2人の間に向かって歩きだす。



「2人共、喧嘩止めて下さい!」





「……あ、帝人君!」
「……帝人!」


―――ピタリ


あんなに荒れていた雰囲気が、まるで無かったかのように消えた。あれだけ大きな音が急に消えたため、学生の殆どが騒音の元凶に目線を向ける。

そこには、唯一例の2人を止められる一人の男子学生がガミガミと説教をしている最中だった。


「どれだけ周りに迷惑かければ気が済むんですか!」
「俺は被害者なんだけど」
「…お前は加害者だろ…!」
「2人とも加害者ですっ!ちゃんと反省してるんですか!!」


気のせいか、少し2人が小さく見えた気がした。



「静雄さんは投げたモノを元の位置にちゃんと戻してくださいね」
「…おぅ、すまねぇ帝人」
「臨也さんは反省の色が見えないんで、この一週間話かけないで下さいね。もしも話しかけてきても無視しますから」
「えぇーっ!!」
「何か文句あるんですか?」


にこりと笑った帝人からは、明らかに怒りのオーラを纏っていて、何とも言えない寒気が臨也の背中を走る。

「………は、…はは」


臨也は帝人の怒りにいつもの笑顔を引きつらせながら、笑うしかなかった。




(((……もしかしたら、アイツが最強なんじゃ!?)))





生徒・先生達一同は、帝人に感謝しながら今日も一日頑張ろうと思ったのだった。




一週間、帝人から無視をされる罰を受けた臨也は超が付くほど機嫌が悪く、いままで以上に静雄との喧嘩の被害が広がり、また帝人は2人のストッパーとして駆り出されたのはまた別の話。



END.


急ストッパー
(2人共っ!!)
(いい加減にして下さい!)


あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ