Novel
□傷にキス
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「もう。またこんなに怪我を作って!何回注意したら分かるんですか?」
「…お、おう。すまん」
目の前で自分の怪我の手当てをしている恋人、竜ヶ峰帝人。
自分の…―平和島静雄の周りで、普通に接してくれる人間の数少ない中の1人であり、大切な人でもある。
「またあの人と喧嘩したんでしょ?」
「…あのノミ蟲がいけねぇんだ」
毎回顔を合わせる犬猿の仲な折原臨也と平和島静雄の2人。洒落にならないほどの喧嘩っぷりを帝人は何回も目撃しているが、一言でいうと普通ではない。
一方は自動販売機やら標識、ベンチなどを投げ飛ばし、もう一方はナイフで攻撃。一度目撃してしまうと、不良達の間で起こる殴り合いなんて可愛く思えてしまう。
「今日は僕がたまたま目撃して止めたから良かったですけど。……っと、よし!治療完了です!」
「すまん。迷惑かけて……」
「あんまり怪我しないでくださいね?人間なんだから下手すれば死んでますから」
「……俺は、普通じゃねぇぞ」
「゙喧嘩人形゙の事ですか?」
池袋に流れる平和島静雄に対する通り名。少なからず帝人も正臣から話を聞いたことがあった。
喧嘩をするだけに存在する人形。
静雄は苦笑いを浮かべ、下を向く。帝人には悲しいように見えた。
「静雄さん、傷…痛いですか?」
「あ?…まぁ、痛いが…」
「俺の声、聞こえますか?」
「??………帝人?」
意図のわからない質問を何回か聞くと帝人の手が静雄の胸に軽く触れ、続いてその手のすぐ横に耳を当てる。
「…っ、…!!?」
声にならないまま急な帝人の行動にただ驚き、身体を石のように硬くする。
「静雄さんは人形じゃないです」
「……っ…」
静かに一言一言つぶやく。
それに静雄は心を少しずつ暖かくしていくのを感じていた。
未だに胸に耳を当てている帝人に優しく、でも何処か少し乱暴に頭を撫でると、こちらに向かってフニャリと笑う。
「……僕が傍にずっといますよ」
「あぁ…ありがと、な。」
傷にキス
(貴方の傷が癒えるなら何度でも)
「……あの、静雄さん?」
「なんだ?」
「静雄さんってあまり顔に表情でないんですね?」
「は?」
「いや、あの…脈速かったし…」
「お前は分かりやすいぞ?」
「へ?」
「気付いてねーのか?顔、真っ赤。」
「ぇえっ////!?」