短編拳銃活劇単行本vol.1
□愉しい余暇の作り方
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彼女は3度も裏切られた。永い相棒になるであろうと大枚を叩いた自動拳銃に3度も裏切られた。
確かに45口径の停止力は魅力的だった……だが、それだけだ。
殺し屋でもカチコミ屋でも無い彼女は命中精度よりも信頼性を優先してスプリングフィールドアーモリーの1911を最初の友として選んだ。タマをばら蒔く機械としてしか認識していなかった。結果として装弾数の少なさから何度もロスを突かれて被弾した。
暴力のレンタルリースを生業としていない彼女は次にパラオーディナンスP14を選んだ。だが、しっかりと握り込む事が出来なかった。銃を握る上で｢保持する事｣と｢操作する事｣と｢発砲する事｣と｢握り込む事｣は夫々別問題である事を悟った。
私服に忍ばせるコンシールドとしても主眼に入れてデトニクスを選んだが、残念ながら至近接では可動部位が多く空薬莢が弾き出される方向も考えなければならないカットダウンモデルは帯に短し襷に長しと云う印象を受けた。
京藤リオ(きょうどう りお)は到頭、自動拳銃と云う選択肢を捨てた。尚早と言う意見も聞かずに、『それ』を選んだ。『それ』は選んでも……選べたとしても『入手出来るか否かは別問題の珍品でしか無かった』。心理学的には彼女の奥底のマチョズモが働いたからかも知れない。
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薄い臙脂色をしたハーフコートを纏ったリオ。
172cmの長身。長い肢体を収めたスタイルは立ち尽くしているだけでもモデルとして雑誌の表紙を飾れる位に整っている。滑らかに鑢掛けした様な輪郭のラインに鏤められた引き締まったパーツは流麗さを伺わせるが人形の様な無欠性は感じられない。シュシュで大雑把に束ねられたポニーテールと横咥えにしたやけに太いデミタスシェイプのシガリロがそこはかとなく残念な美女を演出しているからだ。
今年で27歳に成る。拳銃を扱う――撃つ方の人間として――職業ではあったが、『護る側』の人間だった。だからと言って必ずしも遵法精神溢れる法の番人と言う訳では無い。寧ろ法の番人は天敵だ。
ヒールが限りなく低い、活動的な革靴の底をカツカツと鳴らしながら夜の繁華街を歩く。最近は一昔前ほど、けばけばしい彩りで道行く人を嘗める事も無くなった。これが節電が叫ばれる当代の流行りらしい。