Prince
□愛する君へ
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氷帝学園中等部
男子テニス部・部室
「おい、侑士ー帰ろうぜー」
部活終了後
向日は友人の忍足に声をかける。
「悪いな岳人、俺はもう少し残るわ。せやから先帰ってええよ」
忍足は申し訳なさそうに眉毛を下げて、向日の誘いを断る。
「おぉ!!了解了解、今日はそんなかんじなんだな!!」
向日は手を叩き、なるほどっといった様子で答えると、荷物を持って部室を後にしようとする。
「あーぁ、俺も若が古武術の稽古じゃなかったらデートできたのによー」
向日は少しむくれながらもニカっと笑い忍足に別れを告げた。
「じゃあな侑士!!跡部と喧嘩すんなよー!!」
「おいおい…縁起でもない事言うなや」
忍足は困ったようしながらも、幸せそうに笑った。
そして向日が部室を後にして忍足1人だけになった。
窓から外を見ると、空はもうオレンジ色に染まり少し眩しい。
「景ちゃんまだやろか」
忍足は跡部専用の大きなソファーに腰掛けると、大きく伸びをした。
「監督も、毎日毎日景ちゃんの事呼び出して…景ちゃんにもしもの事があったら鳩尾に蹴りかましたる」
忍足は自分1人しか居ない部室でいたずらに笑うと、部活の疲れからか瞼が重くなって来た為、自然と瞼を閉じた。