ランラン♪と歌いながら上機嫌でマシュマロを頬張る白蘭に正一が深く溜息を吐き出した。
買い出しに行ったはずなのに、どうして僕達は両手いっぱいのマシュマロを抱えているんだろう。とりあえず一時的に思考停止した正一の頭の中には、もう好きにしろという思いしかなかった。
正チャンも食べなよーと口の中に突っ込まれたマシュマロを噛みながら、いつか自分が店長になるしかないという気持ちは強く沸き上がっていたけれど。


「あれ?」
「何ですか?買い忘れですか?更なるマシュマロを?それは愉快ですね。」
「やだな正チャン、あれ見てよ。」
「はい?って言うか、うわっ…」

消えろドカスが!消えるのはお前だろ?
道のど真ん中で何とも迷惑な話。殴り合い、罵り合い、凄まじいバトルを繰り広げている二人に正一が後ずさる。
これは関わったら死ぬしかない。危険だと背中を向けた正一の首根っこを掴んだ白蘭が、そっちは今来た道だよと暢気に笑うのに空気読んで下さい!と思わず大声で叫んでしまった。
気が付いた時には既に遅く。久しぶりだなと笑い、いつのまにか目の前にいた綱吉に魂が飛び出しそうな気持ちになった。
白蘭サンは!?振り返り確認した白蘭の目の前には無愛離愛の店長、ザンザス。テメェのせいで売り上げが下がってんだよカスがとケンカを売られていた。


「ていうか今まで二人でケンカしてたのに何で急に僕達に!?」
「なかなか勝負がつかないから飽きた。」
「納得いかない!」
「商売敵を潰してからカスを潰す。」
「納得出来なくもないけどやっぱり無理!」
「何か正チャン忙しそうだね。」

芸人もびっくりのスピードツッコミだよー。あははと笑う白蘭の口を塞ぎ、余計な事は言わないで下さいねと迫る正一の目はいつになく真剣だ。
んー…と少し考え、塞いでいた正一の手を白蘭がべろりと舐める。手の平に感じた生暖かい感触に、その場にへなりと座り込んだ正一が身を震えさせた。
感じちゃった?やけに楽しそうな白蘭に、ええ感じましたよ殺意をね!とお腹を押さえた正一がうずくまる。

「お腹痛い…」
「正チャン大丈夫?店まで歩ける?」
「何なら俺が店まで担いでやろうか?ああ、礼は体で払えよ。」
「店に向かって吹っ飛ばしてやるか?礼はお前らが店を閉店させれば他にはいらねえ。」
「どっちも最低すぎるだろ…」

チームボンゴレのドSリーダー、沢田綱吉。
そして無愛離愛の暴君店長、ザンザス。
さすがとしか言いようがない。こんな二人の前だと少しは白蘭サンも普通に見えるなぁと思っていると、正一の肩にそっと手を触れた白蘭がにっこりと微笑んだ。大丈夫だよ正チャン。そう呟き、綱吉とザンザスに視線を向ける。


「正チャンはね、僕の大切な人なんだ。だから僕が助ける。君達の世話にはならないよ。」
「白蘭サン…」

まさかこんな言葉を言うとは思わなかった。
セリフだけ聞いてれば感動物だが、残念ながらその場に響いたのは笑い声。ぶはーーっと盛大に吹き出したザンザスと、くくっと小さく笑う綱吉。
この二人が同じタイミングで笑うなんて怖い。(ていうか気が合うな。)


「ストレス性の胃痛だろ?もちろん原因にお前も含まれてんだろ。」
「自覚なしか?めでてえカスだな。」
「まさかあ。そんな事ないよね正チャン?」
「すいません、否定が出来ません。」

上司(ボス)に悩まされるのも部下の仕事。
この二人の仲間も大変そうだと同情するが、見た感じ自分からすれば彼らもかなり破天荒な人達だ。
普通が1番。よく言うけれど普通じゃ乗り切れない場合もある。そして自分で言うのも何だが僕は普通なんだよと正一が痛む腹をぎゅっと押さえた。


「そもそもの話、クソまずい漬物しか出さないオンボロ居酒屋が他の店にケンカなんか売ってんなって話なんだよ。」
「何だとドカスが!殺してやる!」
「今だ!逃げましょう白蘭サン!」
「あれ?正チャン急に元気になった?」

白蘭の手を引き、脱兎のごとく走る正一を見ながら正チャンは強いねと白蘭が笑う。
惚れ直しちゃったーというセリフに睨みを返し、僕は普通なんだと心の中で叫ぶ正一は、普通の人より少し…強い。


























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