じわじわと疼く下半身に身を震わせながら、雲雀は隣に座って煙草を吸う綱吉の姿をじっと見つめた。
終わった後の一服、なんて別に珍しくもない光景だが今は違う。終わった後でも始まる前でもなく、まさしく真っ最中の時なのだ。
ねえ。消え入りそうな小さな声を上げて綱吉の腕にそっと触れてみても返されるのは意地の悪い笑みだけ。ふわりと漂う煙に雲雀が唇をきゅっと噛んだ。
この状況を楽しんでいるという事が見て分かるからこそ綱吉の思い通りになるのは悔しいのに、今の雲雀にはどうする事も出来なかった。
『今日はイヤだと言ったらすぐにやめる。』
始まる前に告げられたのはその一言。だが綱吉に限って行為を途中で止めるなんて事はまずありえない。そもそも綱吉は雲雀がいやいやと言いながらも乱れる姿が大好きなのだから。
嘘つき。鼻で笑う雲雀に、綱吉もまた鼻で笑って返す。

「して下さい綱吉様って言わせてやるよ。」

言うかそんな事。
あの時は自信を持って綱吉を睨み付けた。


「…ねえってば…」
「うるさいな。もう終わっただろ。」

ぱしっと腕を払われて泣きそうになる。その間も綱吉は楽しげに唇を歪めて雲雀の反応を見ているだけだった。
イヤだと言ったらやめる。そう言われた行為の最中、綱吉の指が雲雀の前立腺をぐりぐりと力強く押し潰すように何度も刺激した。人差し指と中指の二本が遠慮なく中を暴れ回り、雲雀は大きな声を上げる。


「ここが大好きなんだよなお前は。」
「ああんっ!」

1番敏感と言っても過言ではないその場所。少し触れられただけで体が反応してしまうそこばかりを重点的に攻め上げる綱吉に雲雀が首を横に振った。
いつもよりかなり強いその刺激。乱暴とも言える指の動きに雲雀は涙を流しながらそれに耐える。
擦られ、潰され、引っ掻かれ。

「そこだめっ…もう、やめて…!」
「何だ、嫌か。」
「んあああっ…!」

更に強く擦られるのに雲雀がこくこくと頷く。強すぎる快感に体も頭もついていけない、そんな雲雀に綱吉は笑った。


「本当に嫌か?」
「やだ…、やだっ…」

じゃあ終わりだな。
ずるりと指を抜き、雲雀を見下ろした綱吉がにやりと唇を歪めた。
涙を浮かべながら体を震わせる雲雀を気に止める事もなく、サイドテーブルに置いていた煙草に火を点けた綱吉が隣の雲雀を横目に見遣るその顔はものすごく楽しそうだ。


「イヤだと言ったらやめる。言ったよな?」

俺は優しいからな。
ふっと吐き出された煙が揺らめきながら消えていくのに雲雀が涙を拭った。
どうせ吸い終わった後にまたするくせに。そう思って綱吉の煙草が短くなっていくのを黙って見ていたが、一本目が終わった後、綱吉はまたすぐ二本目へと手を伸ばす。
うそ。まさか本当に?目を見開いた雲雀の視線が綱吉へと向けられるが、本人は口元に笑みを浮かべたまま雲雀を見るだけだ。


「んっ…」

果てる前に指を抜かれたため、雲雀のペニスはまだ勃ち上がったままだ。
激しい刺激を与え続けられた体もまだその余韻を残している。じわりと疼く腰に、どうにかして欲しいという気持ちで綱吉へ手を伸ばす。もう終わりだと言われて払われる。
途方に暮れる雲雀に綱吉が放った一言は、イクくらい一人でも出来るだろ?そんな言葉だった。


「…沢田っ…」
「可愛いお前が嫌がる事はしたくないからやめたんだ。別に何も不満なんか無いだろ?」
「……さわ…」
「これ吸い終わったら自分の部屋に帰れ。」

漂う煙が雲雀の視界を白く染める。今日は本気でこういう気分らしい。
して下さい綱吉様。言ってしまえばすぐにでもしてくれるんだろうが雲雀にもプライドがある。


「…じゃあね。」

滲む涙をもう一度拭い、ふらふらとした危なっかしい足取りでベッドから下りた雲雀が床に散乱したシャツを羽織った。
灰皿に押し付けられた短い煙草。伸びた綱吉の手が雲雀の腕を掴み、力任せにベッドへと引き上げる。


「痛っ…」
「一人じゃ恥ずかしいならこれを使え。」

そう言って綱吉がベッドの下から取り出したのは丸い小さな玉が無数に埋め込まれ、まるでイボのように突き出ている太めのバイブだった。からかうようにそれを頬に当てられ、ごりごりと擦られるのに雲雀が頬を染める。
普通に考えればこれを使う方がよっぽど恥ずかしい。キッと睨み付け、いらないと返した雲雀に綱吉がヒュッと口笛を吹く。


「遠慮すんなよ。気持ち良い事が大好きなお前にピッタリだ。」
「ばかにしないで。」
「してねえよ。褒めてやってんだ。」

そう言って雲雀の尻にそれを宛てがった綱吉がぺろりと舌なめずりをする。ぎくりと体を強張らせた雲雀が咄嗟に綱吉から離れようとするも間に合わず、ずぶりと深く突き入れられたバイブに高く声を上げた。


「ああぁんっ…!」
「少しキツそうだが、でもまあしばらくしたら慣れるだろ。ちゃんと動かしてイけよ。」

こういう感じで。突き出た玉が敏感な内壁をごりごりと擦るのに、雲雀が頭を振り乱す。


「いやーっ…!」
「ああそうだ、お前が嫌がる事はしないって言ったんだよな。」

ぱっとバイブから手を離し、ごめんなあ?と凶悪な笑顔で首を傾げる綱吉に雲雀が涙を流した。
こんなものまで挿れられて、ここまで過敏になった体を放っておかれて、それで部屋に帰れだなんて。
ニヤニヤと笑う綱吉の望むものが何なのかは分かっている。ただ、それを言うために捨てるプライドはあまりに大きすぎる。
何が綱吉様だバカ、そんな悪態を心の中で吐きながら寄り添うように綱吉へ体を預けた。


「お願い……して…」
「聞こえないな。」
「…気持ちよくして…」

まあ良いか。その言葉と共に顎を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる。


「もっと可愛いおねだりの仕方もあるから言ってみろよ。」
「……何…」
「お願いです、早く綱吉様のものを僕に突っ込んで下さい。」

だから言うわけない。呆れにも似た気持ちで溜息を吐き出し、するりと腕を回した背中に小さな爪痕を残して笑った。
可愛い抵抗ならいつだって出来るんだけどね。





























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