お邪魔しまーす。どたばたと家中に騒がしい足音が響くのに、みんな元気だなと家光が豪快に笑う。
いらっしゃーい。優しく出迎えてくれた奈々に対し、つまらない物ですがどうか受け取って下さい!と菓子折りを渡す獄寺は既に綱吉の嫁候補に名乗りを上げていた。
本来なら毎年この時期は人の賑わう場所に行き、ここぞとばかりに狩りを行う絶好の稼ぎ時なのだが今年は違った。
お友達も一緒に家に帰って来なさいよ。突然かかってきた奈々からの電話に綱吉は眉を寄せながら断り、そしてしばらく経った後、何と今度は綱吉の天敵でもある憎たらしい赤ん坊からの電話。


『仕方ねえ。お年玉として一人20万円くれてやるから実家に帰れ。』

ママンを悲しませちゃいけねえだろ。
言い終わり、すぐに電話を切ったリボーンには聞こえないが大きな舌打ちをした綱吉が新年一発目のパンチを壁に。実家に帰るのは別に構わない。働かずに金が貰えるのならラッキーだし、鬱憤晴らしに誰かを狩りたきゃそれこそ道行く適当な人間で良いのだ。
ただ、問題なのは今回メンバーをつれて行く事。
とりあえず調子に乗りそうな骸にはあらかじめ電流の流れる首輪でも付けておいて、うるさいだけのランボは睡眠薬で眠らせてから運ぶか。
くくっと喉を鳴らしながら笑う綱吉の後ろで、寝起きの雲雀がまた何か企んでそうだなとそれをぼんやりと眺めていた。


「骸くんは素敵なチョーカーしてるのね。」
「いいえ違います、これは首輪です。」
「不思議。もしかして趣味なの?」
「ええ、お宅の息子さんのぎゃあああ!」
「今何かバチバチって音しなかった?」

気のせいだろ。しれっとした表情で焼酎を飲み干した綱吉が、なあ?と骸にニヤリと笑いかけた。涙目になった骸が、僕すごい静電気体質なんですよとひくひくと無理に笑顔を作る。
まあ大変ね。あっさりそれを信じる奈々に、息子さんのせいですよと言ってしまいたい。


「料理も頑張ってたくさん作ったのよ。」
「うむ!極限に美味だ!味付けを教わりたいくらいだな!」
「あら、じゃあ後でレシピ渡す?」
「おお!有り難い!」

何か仲良しになってる。
料理談議に華を咲かせている奈々と笹川を見ながら、お母様に取り入るなんてしたたかな芝生め!と獄寺が奥歯を噛み締めた。


「ヒバリ!俺の隣空いてますよ!ハハハ!」
「やだ。」
「春日の真似か?ツナのオヤジさん、もう出来上がってるのな。」
「うるさいな。少し眠らせるか。」

焼酎の瓶を強く握り、大きく振りかぶる綱吉を山本と骸が必死で止める。
新年早々、こんなバイオレンスな親子喧嘩は見たくない。

「そう言えば大掃除中に、ついついアルバムに見入っちゃって。」

これなんだけどね。そう言って奈々の持って来たアルバムには子供の頃の綱吉と雲雀、山本の写真がたくさん収められていた。
そんな物出すなよ。思わず悪態をつく綱吉に対し、ダメだぞうツナぁ〜とデコピンをした家光の後頭部には今度こそ焼酎瓶がクリティカルヒットした。
大丈夫、生きてる。


「十代目の幼少時代…!お母様、これいくらで買えますか!?」
「雲雀恭弥の写真、3枚頂けますか?」
「ちょっと君、3枚も何に使うつもり。」
「保存用、鑑賞用、実用の3枚です。」
「実用って何。」

絶対ろくでもない事に決まってる。あげちゃダメだよ。雲雀のその言葉に、ヒバリちゃんがそう言うならと奈々が笑った。
あ、ここにも僕等には越えられない仲良しさんの壁がある。勝ち目のない勝負を目の当たりにし、後でこっそり拝借しようと決めた。(出来るものならな。そして多分無理。)


「懐かしいなー。この頃はよくツナとケンカしてたもんな。」
「んだと!?てめー山本!お前この頃から生意気だったのか!」
「どっちがヒバリと結婚するのか、どっちがヒバリと遊ぶのか。取り合いばっかだったな。」
「当然ヒバリと結婚するのも遊ぶのも十代目に決まっ……あれ?」
「獄寺隼人、少し寝ましょうか。」

座布団お借りしますね。
いそいそと並べた座布団に獄寺を寝かせ、子守唄の代わりにサンバを歌う骸はまるで聖母のようで…


「寝れるかーー!!」
「せめて1番は歌わせて下さいよ!」

獄寺くんも骸くんも面白い人なのね。パチパチと拍手を送られるその姿は、まさしく新春の特別番組でネタを披露する芸人そのもの。(本人たちにその気は全くないけれど。)
飽きない奴らだな。くっくっと喉を鳴らしながら酒を煽る綱吉が雲雀の頬をするりと撫でた。


「餅みたいだな。」
「咬み殺すよ。」
「は、何なら噛み付いてやろうか?」

がぶりと。並びの良い歯を光らせながら笑う綱吉がじりじりと雲雀に近寄る。
ちゅ、と頬に当てられた綱吉の唇に雲雀が目を細めた。歯は立てられなかったが、生温い舌が頬から顎をべろりと辿るのに体がびくりと反応を返す。


「あ、ずりーなツナ!俺も俺も!」

それに気が付いた山本が綱吉と雲雀に抱き着き、二人をぎゅっと抱きしめた。
苦しい。雲雀の文句にも聞く耳持たず。機嫌が良いのか、珍しく綱吉も仕方ねえなと笑っている。


「てめえええ山本!十代目から離れろ!」
「ちょ、さすがにそれは僕もまぜてくれなきゃ寂しいです!」

獄寺と骸もそんな綱吉たちにがばりと抱き着き、まさしく団子状態。ランボが起きてたら大はしゃぎだっただろう。


「どさくさに紛れてどこ触ってんの…!」
「もしやお尻ですかぎゃああああ!」
「とっとと退け。その首輪、次はアソコに付けてやろうか?」

すっかり忘れてた…。
ばたりと倒れた骸を転がし、綱吉が唇を歪めた。
退いた山本と獄寺もすっかり血の気の引いた顔で両手を上げて降参のポーズを取っている。
何事だ?食べる事に夢中になっていた笹川の幸先はきっと良い。大吉。触らぬ神に祟りなしだ。
逆に触ってしまった人間たちには一抹の不安が過ぎる。まあ間違いなく凶は新年から電流を食らった骸に決まっているけれど。


「ねえツッくん、ヒバリちゃんはいつお嫁さんに来てくれるのかしら。」
「明日だ。」
「やだ、かなり急ね。式場はどうする?」
「ちょっと、僕は明日から沢田恭弥になるの?」
「じゃあ俺も明日から沢田武になるから、ヒバリはもう一つ山本恭弥って名前作ろうぜ。」
「十代目!俺も沢田隼人になります!」


君たちはバカですか。
食らった電流に意識を持って行かれそうになりながらも骸が唇を動かす。ただ、それはあまりに小さすぎるため言葉となって綱吉たちに聞こえる事はない。
新年早々ツッコミ不在。
でもそんな事を考えながらも、六道恭弥も良いですよなんて思ったりもしてしまうのだ。


この世にいる可愛い子は全て嫁がせろ。
沢田家の家訓はこれで決まりだ。









































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