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□ワールド・エンド
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『ガキ…剣のスジは悪くねぇ。あとはその甘さを捨てることだぁ』


それを最期に、スクアーロは鮫に喰われ死んでいったわけだが、ザンザスはどうしようもなく荒れ、しかし周囲の人間は普段とたいして変わらないと言う。彼の部屋からは、明かりがついて以来引っ切り無しに耳を覆いたくなるような破壊音が幹部達の元にこだまするのだ。



「…あーあ、荒れてるねボス」


ザンザスの部屋に位置する方を見つめたまま、ベルは半ば呆れたように言った。


「ボスはいつもとお変わりない筈だ」


彼の独り言ともいえるそれに、レヴィはフン、と鼻を鳴らして丁寧に答える。


「それにしても驚いたね、何たって、あのスクアーロが負けたんだから」








一通り周囲を気の済むまま散らかすと、ザンザスはバルコニーに出て夜風に身を晒す。


「…くだらねぇ」


それは意味の無い破壊活動をしている自分にか、はたまた鮫に食われて死んだあのスクアーロにか。


「…くだらねぇ」


二度繰り返し、自分にそれを馴染ませるようにザンザスは言う。それからバルコニーの手摺りに背中を預けてもたれ掛かり、何気なく天を仰いだ。


『う"お"ぉいザンザス!』

『オレは例の計画が成就されるまで、髪は切らねぇ』

『これから先、お前はオレを仲間にしたことに感謝する日が必ず来る』





いつの日か、スクアーロは自信たっぷりに豪語していたが、今思えば、ザンザスにとって、やはりくだらないモノのひとつでしかない。


「何もねぇ…」


彼は、彼にしては幾分弱々しくつぶやいた。そう、スクアーロがいない今自分に何が残ったというのか。


「何も、」


何もない。あるはずがないのだ。残ったのは、保証のない誓いだけ。


「…スクアーロ」


雲から垣間見える月を、ザンザスの紅い眼が捕えた。それは金色と呼ぶにはあまりにも遠く、むしろ銀色に近かった。


あの傲慢な、鮫の色。嫌でも頭に浮かぶ、スクアーロの色。


「カスが…」


スクアーロはこの世界から名を消した。二人の世界は消えた。これからは、独りの世界の始まり。


『う"お"ぉい、ボス!!』


ふと、あの鮫の声が脳内で繰り返されたとき、ザンザスが見ていた銀色の月が、笑った気がした。それが気のせいであればいいと、彼はどんなに思ったことか。







ワールド・エンド
(世界は一度滅びる)







H19/5/22(火) ツブテ
 

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