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□寂しがり屋な僕らは
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『ただいま電話に出る事ができません。発信音の後にメッセージを―』


相手が不在とわかり、ディーノは直ぐさま電源ボタンを押して、電波の発信を断った。そして「またか」と呟いて、ため息の後に携帯を閉じ上着の中にしまう。疲れ果てた身体を休めるように、黒皮製の大きなチェアに倒れ込む。

「メールも電話も駄目。どうなってんだあいつ…」


あいつ、というのは彼にとって言わずもがな、雲雀恭弥。彼とはここしばらく連絡を取り合っていない。といっても、向こうから連絡をしてくることは少なかったから、ほとんどディーノの一方的なのだが。しかしそれでも想いは一方通行でないと信じている。

雲雀は昔も強かったが、今は更に強くなってボンゴレ十代目をサポートしている。守護者の中で最強を謳われる程だ。そんなものだから、恐らく忙しいのだろう。ディーノは半ば諦めかけていた。


「…しかたないか」


ディーノは本日二度目のため息のあと、不意に、執務室の窓から見える、空を眺めた。今日は陽気な暖かい日。所々にふわふわした雲が浮かんでいる。


「恭弥…」


ディーノの気持ちとは裏腹に、皮肉な程に空は晴れ渡っていた。










「…」

「雲雀、行くぜ?」


雲雀が携帯を眺めその場から離れようとしないのを見て、側にいた山本は声をかけた。雲雀は携帯を閉じると、あからさまに不機嫌な表情を浮かべる。


「偉そうな口きかないでほしいね、咬み殺すよ」

「ハハハ、なんか機嫌悪いのな。嫌がらせメールでもきたのか?」


山本が冗談交じりに尋ねると、雲雀は意外にも真面目に答えた。


「むしろ、逆だよ」












「…ス」

「…」

「ボス!」

「わっ!」


ディーノは頭上から降ってきた声に、びくっと肩を震わせ跳び上がった。その様子をおもしろがって、ロマーリオは彼をからかう。


「しっかりしてくれよな、ボス」

「あ、悪い…」

「…キョーヤの事か?」

「ああ」

「仕方ねぇよボス。あっちは何てったってボンゴレだ」

「…」


ディーノはデスクの上の書類に目を落とす。こうして連絡がとれなくなって一週間が経つが、そのおかげで最近、とみに思う事がある。

何故ボンゴレなのか、と。もし、雲雀がボンゴレじゃなくキャバッローネに所属していたら?こんな思いしなくて済む。こんな擦れ違いを続けなくて済むのに。

ディーノは焦っていた。一日でも彼の顔を見て、彼に触れないと不安で仕方ないとさえ思うのだ。縛り付けて、何処にもいかないようにしてしまいたいとさえ、思うのだ。



ディーノが俯いて何も言わなくなったのを横目に映しながら、ロマーリオは煙草をふかし、窓の外に建つ邸宅を眺める。


「最近じゃ、あそこにも帰ってないみたいだな、キョーヤは」

「…だな」


ディーノもロマーリオに倣って外を見た。まだ建てられて新しい、彼の別邸だ。


「…ほんと、何の為の同棲だよ」


彼は毎晩あそこで雲雀の帰りを待っているのに。




数日後。忙しいのはボンゴレ側だけではなく、キャバッローネも慌ただしい日々を迎える事となった。ボスであるディーノは尚更のこと、忙しい。






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