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□呵呵大笑
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ああ、空は果てしなく曇り空。全く嫌気がさす。何が嫌かって、普段黒に身を包まなくてもいい連中までもが、全身真っ黒にして、重々しい雰囲気を放つ。何だかおかしな気分だ。空以外が、真っ黒。決して嫌いな色じゃないのに、今は腹が立つ。それが嫌だ。ドン・ボンゴレが権力をフルに使ったせいで、こうしてこの暗い式に出席せざるを得なかったわけだが、本当に、いますぐ引き返したい。


「雲雀、大丈夫か?」

「うるさいよ」


先程からあの人の部下だか誰だか知らないけど、本当に、うるさい。大丈夫かと聞かれたところで、大丈夫じゃないと告げれば何をするわけでもない、どうするわけでもないだろう。


「まぁ、あいつは気にくわねぇけど、いい奴だったぜ」

「そうだね、色々と助けてくれたもんね」


本当に、やめてくれ。目の前で群れるな。気を使っているならば、今すぐこの場から立ち去らせてほしいものだ。



「ああ、そろそろオレたちの番だね。…行こうか、雲雀さん」


ドン・ボンゴレ。本当にファミリーを束ねる立場の人間だろうか。顔が酷い、ぐしゃぐしゃだよ。少しは隠そうという気はないのだろうか。とか何とか考えている間にああ、順番がきたか。前を並んでいた参列者がどんどん散らばっていく。



「…」


やっと、会えた。こういう言い方は誤解を招くから断っておく。自分はこの人の顔が見たかったんじゃなくて、早く帰りたいんだよ。こんなふざけた場所から。でも、ああ、変だな。似合わない花を周りにあしらって、それでも口の端が僅かに上へと向いて見えるのは、気のせいだろうか。


なんでだろうね、君の顔を眺めていたら、今自分がここにいることが、酷く馬鹿らしい。だいたい、こんなのに来る暇があったら、群れる草食動物達を咬み殺しているさ。さっさと済ませて、帰りたいのが本音だ。



「ディーノさんっ…」


ドン・ボンゴレはどうやら耐え切れなくなったようだ。周りの奴らも、彼と同時にソレを出し始めた。なんて滑稽な姿。自分はこの場でソレを出せるほどのものは持ち合わせてはいない。


「キョーヤは知らなかったよな。ボスは…ボスは車に轢かれそうになったガキを庇って―」


ああ滑稽だ。本当に、馬鹿馬鹿しい。益々自分がここに来たことが、ここに存在することが馬鹿らしくなってきた。

ファミリーのドンを担う者が、子供を庇って死ぬ?何をやっているんだ。この人は子供の命とファミリーの、どちらが大事だと思ったのだろう。


「さぁ雲雀さん。雲雀さんも別れの言葉を―」


ドン・ボンゴレが半ば強引に渡してきた花を一輪受け取って、あの人の頭上にかざす。このまま落とすのは癪だから、その花をむしりとって、グシャグシャにしてばらまいてやった。


「ひ、雲雀さんっ」

「キョーヤ!?」

「うるさいよ」


いいんだ。この人にはこれで。綺麗な言葉なんて必要ない。持ち合わせてもいないよ。断りもなく勝手に逝ったこの人には、むしろちょうど良い。お似合いだ。


幸せそうに眠るこの人を、罵るかのように笑ってあげる。だから最後の言葉だって、これでいい。



「無様な最期だ、君らしい」



だって、そうだろう?笑えるよ。もう、この世に居ないことが、酷く馬鹿馬鹿しくて。もう、君の総てが…くだらなく思えるんだ







呵呵大笑
(彼の死さえ僕は笑う)




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